お金の専門家・横川楓さんに聞く!【後編】コロナ時代の賢い戸建て購入テク講座

2021年7月14日

一国一城となる「戸建て」の購入を夢見る人は、コロナ禍でますます増えているようです。人生で一番大きな買い物・住宅購入という大きな目標のために、どのような点に気を付けるべきか、そのポイントはしっかり押さえたいものです。前編の「ミレニアル世代のライフプランニング講座」に続き、やさしいお金の専門家・横川楓さんが解説。これから家づくりを考えはじめた読者に向けて、分かりやすくお答えいただきました!

教えてくれるのは横川楓さん

1990年東京都生まれのミレニアル世代。明治大学大学院卒、MBA取得。学生時代にアイドル活動を並行して行っていた異色の経歴の持ち主。
現在は「やさしいお金の専門家」の肩書きで、お金の知識を「誰よりも等身大の目線でわかりやすく届ける」ことをモットーに、さまざまなメディアへの出演や執筆、講演活動を積極的に行う。著書は『ミレニアル世代のお金のリアル(フォレスト出版)』。Twitter

コロナ時代の戸建て購入、失敗しないためのポイント

コロナなど、この不安定な社会で住宅を購入するために、必要なことは何なのでしょうか。

「家が欲しい。そう考えている人は多いことでしょう。一方コロナ禍で収入が不安定になり、先が見えない世の中で高額な買い物を見送っている人もいると思います。世界的に経済が停滞していることなども考えると『無茶をしない』ことは何よりのポイントになります。

そんな中、リモートワークは今後もニュースタンダードとして定着することが考えられるので、今より少し郊外に新居の購入を考えるのは、一つの賢い選択だと思います」

戸建て購入のために、考えておくべきことは?

無理のない範囲で住宅購入を検討するそのためには、いくつかの問題をクリアにしておく必要があるでしょう。事前に考えておくべき点、押さえておくべき点はどんなものがあるのでしょうか。

住宅ローンを組む前に

「住宅購入を一括で支払うケースは少なく、ほとんどがローンを組むことになると思います。住宅ローンには、変動金利のもの・固定金利のもの・ローンに疾病保障が付いているもの・二世帯ローンなど、さまざまな種類・サービスがあります。どのローンが自分の収入や返済計画に合っているか、まずはWEBで検索し、シミュレーションをしてみましょう。

サイトによっては、提携している金融機関に紐づけされているものもあるので、ひとつのサイトで終わりにせず、複数のサイトに行ってみることが大切です。

今賃貸住宅に住んでいるのであれば、その家賃と同等、またはそれより少ない月々のローンを目安にすると無理がなくていいと思います。結婚して収入がふたり分になるからと、背伸びした金額を設定することはおすすめしません。住宅購入の先には、出産や育児が待っています。仕事を辞めずに育休を取るにしても、育休中はサラリーの満額がもらえるわけではありませんからね」

固定?変動?金利の決め方

「住宅ローンの金利は、大きく分けて『全期間固定型』『固定期間選択型』『変動金利型』の3つのタイプがあります。

『全期間型固定型』というのは、借入時から返済が終わるまで、金利が変わらず、一般的に金利が高く設定されているのが特徴。金利が高いときに借り入れをしてしまうと、その後の返済期間中にずっと高い金利で返済しなければなりませんが、堅実で明確な返済計画を立てることができます。

『固定期間選択型』は、一定期間だけ金利を固定し、固定期間が終了した後に変動金利になるというもの。デメリットとしては、ローン総返済額が確定しないため、ライフプランニングがしにくいということが挙げられます。また、固定金利が終わった後で金利が高くなっていた場合、返済額が固定時よりも増える可能性があります。繰り上げ返済できるメドがある人におすすめです。

『変動金利型』は、名前の通り金利が変動するタイプ。返済額の見直しが5年に一度程度行われ、金利が低下すれば返済額が安くなるメリットがあります。ただ、金利が上がることも考えられるので、ある程度資金的に余裕がある人に向いています。

それぞれのメリットとデメリットがありますから一概には言えませんが、現在のような不安定な社会状況では、固定金利がおすすめかもしれません」

借入可能額の決め方

「先にもお伝えしましたが、まずはWEBでシミュレーションしてみて、どれくらいなら無理なく払えるかを考えてみましょう。

支払える範囲を検討し、そこから住宅の価格を設定しましょう。『この物件が欲しい!』ではなく『返済が可能な、3000万円で買える家を探す!』

と、視点を返済可能な金額に切り替えることは大切です。大切な買い物だからこそ、無茶をしないことが大切なんです」

使えるサポートはフルに利用しましょう

「新築住宅や土地を取得するときには、さまざまな補助制度を利用することができます。こちらも必ず調べ、購入する住宅や土地が当てはまるかどうかを調べ、助成を受けるようにしましょう。

2021年度を例にとると、一定の省エネ性を満たす家を建てた場合に、さまざまな商品と交換できるポイントが発行される「グリーン住宅ポイント制度(最大40万ポイント」、低炭素住宅や長期優良住宅といった省エネルギー製に優れた木造住宅を新築した場合に交付される「地域型住宅グリーン化事業(50140万円)」、また、各都道府県・市町村が独自に行っている支援制度もあります。これらは各自治体のWEBサイトを確認するか、役場で確認することができるので調べてみてください。

また、住宅ローンを利用して住宅を購入するとき、金利負担の軽減を図る「住宅ローン減税」という制度も用意されています。所得税から控除しきれない場合には住民税から一部控除されるので、こうした制度についても調べるといいでしょう。住宅ローン減税を取り扱うのは国土交通省になりますので、WEBサイトをじっくり読んでみてください」

ファイナンシャルプランナーに相談するときの注意点

ライフプランニングを含め、住宅を購入するにあたってファイナンシャルプランナー(FP)に相談する人は多いと思います。FPに相談するにあたり、どのような点に注意しておくべきでしょうか。

「FPはあくまでもお金全体の流れを見るプロであって、住宅購入のプロではないことを理解しておきましょう。住宅購入に関する話をメインで聞きたいのであれば、FPではなく、銀行などの『住宅ローンを展開している』金融機関に相談するのがてっとり早く、また確実だと思います。

それからもうひとつ。税金対策的な相談をされる方もいらっしゃいますが、FPは税金ついて細かく答えることはできません。住宅ローンや保険の見直しといった相談に乗ることはできますが、税金に関しては税理士の資格が必要になります。一般的な税の相談以外は答えられないので、そうした面はFPに相談しないよう注意しましょう」

自分に合ったFPを見つける

「あくまでも私個人の意見になりますが、自分と年齢が近いFPを探すといいと思います。これは、経験があっても、世代が違うと金銭感覚や収入に対する感覚が変わってきて、高い返済金額を設定されてしまうことがあるためです。また、自身が提携しているローンを強くすすめてくる人も中にはいるので、クチコミなどで下調べをしてもいいかもしれません。

ただ、世代が近い2030代のFPだと、自身で家の購入を考えたことがない人もいるので、予約時に『家を購入したことがあるか』または『家の購入について相談したい』旨を話し、的確な意見がもらえるか正直に確認してみることをおすすめします」

準備をして相談に臨む

「住宅の購入だけではなくライフプランニングのすべてにおいて通ずることですが、まずは『自分がいくら払えるか』を決めてから相談に臨んでください。FPに相談するにしても、金融機関に相談するにしても、これが分かれば相談がスムーズになります。

また、住宅に関することだけではなく、ライププラン全体についても、ある程度まとめてから相談したほうが、良いアドバイスがもらえると思います。まずは、自分自身の人生におけるお金の流れをしっかりと把握する。そこからスタートしてみましょう。

あとは先ほども言いましたが、金融機関に相談するのは有効です。金融機関にはFPの資格を持っている人も多いので、一石二鳥になることもあります。また、住宅展示場に行って、住宅メーカーの人に相談してみるのもひとつの手。住宅のことは住宅のプロに聞くのも、賢い選択です」

現実的に夢のマイホームを手に入れる

「戸建てを購入するという大きな目標があるのであれば、トータルで見てお金を残していく習慣を付けることが大切です。家は建てて終わりではなく、固定資産税や修繕費といったランニングコストもかかります。お金の計画を立てていく習慣をつけ、憧れのマイホームを手にしましょう」と、横川さん。

大切な買い物だからこそ、慎重に、堅実に。まずは自身の身近なお金の使い方から見直し、ファイナンシャルプランナー、金融機関、住宅メーカーなどプロの力も頼ってみましょう。

Photo_Koji Kanatani Interview & Text_Megumi Waguri Edit_Yasushi Shinohara