住宅ローン控除の確定申告を忘れた時の対処法|還付申告はできる?

2023年5月9日

住宅ローンを組んでからは、入居後最大13年間住宅ローン控除が適用できます。しかし、「うっかり控除の申告を忘れてしまった……」なんてこともあるのではないでしょうか。

ここでは、住宅ローン控除とは何か、住宅ローン控除の申告を忘れてしまった際の対処法などについて解説します。確定申告の時期の備えのひとつとして、参考にしてみてください。

監修者 村瀬 紀美子

税理士。大手税理士法人勤務後、平成17年村瀬紀美子税理士事務所開業。近年は、相続税等の資産税に関する申告業務およびセミナー講師を中心に活動。相続手続から遺品整理、空家売却、相続登記、税務申告をまとめて行う『川越相続の窓口』を結成し、多数の税務相談や申告依頼に対応している。

住宅ローン控除とは

住宅ローン控除とは、正式には「住宅借入金等特別控除」といいます。住宅ローンを組んでマイホームを取得した際に、住宅ローンの年末残高に応じた金額を所得税から13年間(中古住宅であれば10年)控除できる制度です。所得控除ではなく税額控除である点、入居から最大13年間控除を受けられる点から、節税効果が高い制度といえるでしょう。

なお、住宅ローン控除を受けるためには、以下の対応が必要です。

・勤務されている方(給与取得者)
1年目は確定申告、2年目以降は年末調整または確定申告

・それ以外の方
確定申告

住宅ローンについてはこちらの記事でも紹介しています。

【2年目以降】年末調整で住宅ローン控除を忘れてしまったら

まずは、年末調整で2年目以降に住宅ローン控除の申告を忘れてしまったときの対応方法について見てみましょう。

「勤務先で再度年末調整をしてもらう」

勤務されている方は、住宅ローン控除1年目の確定申告を済ませている場合、勤務先で再度年末調整が可能なのか問い合わせてみましょう。法的には1月31日までは可能ですが、勤務先の都合で源泉徴収票を一度発行してしまうと対応してもらえないことが多いです。

対応してもらえる場合、以下の書類をそろえましょう。

【提出する書類】

  • 年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
  • 住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書

再調整を行っていない場合や再調整にも間に合わなかった場合、個人事業主の場合は、自分で確定申告を行う必要があります。

「確定申告で住宅ローン控除を適用する」

勤務先の年末調整で住宅ローン控除を適用できなかった場合、源泉徴収票と前章で解説した必要書類があれば、1月1日以降の5年間は自分で確定申告をすることで還付が可能です。

医療費控除のある方や給与以外に所得がある方は確定申告が必要となるため、忘れてしまった住宅ローン控除も一緒に行なってください。

住宅ローン控除の確定申告を忘れても還付申告できる

では、確定申告を忘れてしまった場合はどうでしょうか。確定申告の期限は原則、毎年2月16日~3月15日と決められていますが、確定申告を忘れてしまった場合でも5年以内であれば還付申告できます

還付申告は、確定申告対象の年の翌年1月1日から5年間手続き可能です。2023年に住宅を購入したものの、確定申告を忘れて住宅ローン控除が適用されなかった場合、2024年1月1日から2028年12月31日までに行えば払い過ぎた所得税が還付されます。同時に、5年間の還付申告の期限を過ぎてしまうと、払い過ぎた所得税は還付されません。

住宅ローン控除は所得税から控除しきれなかった場合、翌年度6月からの住民税で控除されます。住民税の控除を受けるためには、納税通知書が発送される前に申告を済ませる必要があるのです。

納税通知書が発送されるのは毎年5月から6月初旬頃までとなります。間に合うのかどうか心配な方は、お住まいの市区町村に問い合わせてみて下さい。

【1年目・2年目以降】確定申告で対応する場合

年末調整での対応ができず、確定申告で対応しなければならない方は、

以下の必要書類を準備しましょう。

確定申告で住宅ローン控除を行う方 1年目〜13年目(10年目) 住宅ローン控除1年目のみ
確定申告書
住宅借入金等特別控除額の計算明細書
借入金の年末残高証明書
マイナンバーカード及び本人確認書類
 ◯マイナンバーカード
 ◯マイナンバー通知カードまたはマイナンバー入り住民票
 +運転免許証やパスポート等の本人確認書類
源泉徴収票(勤務されている方)
土地建物の登記事項証明書
土地建物の売買契約書または建築請負契約書のコピー
耐震基準適合証明書または住宅性能評価書のコピー(一定耐震基準を満たす中古住宅)
認定通知書のコピー(認定長期優良住宅・認定低酸素住宅)

確定申告の手順

以下で手順を確認しておきましょう。

確定申告書を作成する

必要書類の収集後は確定申告書を作成します。
国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、自宅のパソコンやお手持ちのスマホで確定申告書を作成可能です。

時間のない方、申告に自信のない方は税理士へ依頼することもでき、必要書類を渡せば作成から申告までを行なってもらえます。収入が給与だけの方が住宅ローン控除の申告を税理士に依頼すると、2〜3万円程度で依頼できるケースが多いです。

税務署に確定申告書・添付書類を提出する

確定申告書の作成および必要書類の用意が完了したら、自分の住所地を管轄する税務署に確定申告書や添付書類を提出しましょう。
提出方法は、下記の3種類です。

【確定申告および添付書類の提出方法】

  1. e-Taxで申告する
  2. 確定申告書を印刷し郵送する
  3. 管轄の税務署の受付に提出する(収受箱にて時間外も提出可能)

確定申告書は信書に該当するため、郵送で提出する際には宅配便などの荷物扱いではなく郵便物もしくは信書便物として送らなければなりません。
郵便や信書便、時間外収集箱への投函で提出する際は、複写した申告書・宛名と切手を貼付した返信用封筒を同封します。

また、確定申告の期間中は税務署の窓口は大変混み合います。
窓口での提出をお考えの人は、時間に余裕を持っていくのが良いでしょう。
感染症等の影響により、提出に予約が必要な場合もあるため、管轄税務署のホームページで事前に確認しておくことをおすすめします。

【注意】確定申告後に住宅ローン控除を忘れたことに気がついた場合

確定申告後に住宅ローン控除の適用を忘れたことに気づいた場合、確定申告の申告期限内(〜3月15日)であれば再度申告できます。住宅ローン控除を適用した正しい申告書を用意しましょう。

3月15日を過ぎて気がついた場合、訂正はできません。申告額に誤りがあり納める税金が多すぎた際に行う「更正の請求」が、住宅ローン控除では利用できないからです。

この場合、認められる可能性はとても低いのですが、「更正の請求の嘆願」という方法があります。しかし、判例では失念について認めていませんので、どのような事情なら認められるのか所轄の税務署に相談してみてください。

住宅ローン控除の必要書類をなくしたときの再発行方法

住宅ローン控除の適用を受けるには、添付書類の提出が必要です。
ところが、添付書類は年に1度しか使用しないため、なくしてしまう人もいるかもしれません。

添付書類の再発行方法をそれぞれ紹介していきます。

住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書

本来、控除を受ける際に使用する「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」は無料で受け取れますが、再発行時には手数料がかかることもあります。なくしてしまったら、住宅ローンを借りている金融機関に連絡をしてみましょう。

「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」は、住宅ローンを組んでいる金融機関から毎年10月頃に送付されるのが一般的ですが、借入先の金融機関によっても異なります。

勤務先の年末調整に間に合うように送付されるため、この機会に覚えておきましょう。

年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書

マイホームを購入、取得して1年目の住宅ローン控除を行うと、税務署から「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」が送付され、年末調整で控除を適用する際には提出をしなければなりません。

「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書兼給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」は残りの12年分(中古住宅等は9年分)まとめて送付されることから、なくしてしまう可能性もゼロではありません。

紛失した場合は、住所地を管轄する税務署にて再発行手続きを行いましょう。申請書を作成して提出すれば、無料で再発行が可能です。

住宅所有者本人以外が窓口で請求する時は、委任状も必要になることを覚えておきましょう。

年末調整・確定申告の際は住宅ローン控除の申告も忘れずに

住宅ローン控除を適用するには、1年目は確定申告、2年目以降は確定申告もしくは勤務されている方(給与取得者)であれば年末調整で手続きできます。確定申告を忘れたとしても5年以内であれば還付が可能です。

一度確定申告をしてしまうと、基本的に住宅ローン控除はできないため注意が必要です。

勤務先の年末調整や確定申告の前に、必要な書類が整っているのか確認し、紛失している時は再発行してもらいましょう。

不動産についての不明点は住宅展示場でもご相談いただけます。ご予算や家族構成、理想のライフスタイルなどを相談してください。
きっとあなたにぴったりの暮らし方が見つかるはずです。