エネルギーの収支をゼロ以下にするZEH(ゼッチ)住宅。補助金もあり、メリットの多い住宅です。ZEH住宅を建てるには、ZEHの概要や補助金について知識を深めることが大切です。ここでは、ZEHのメリット・デメリットや、補助金の種類・交付条件・申請条件を紹介します。ZEH住宅の建設を検討している人はぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
ZEH(ゼッチ)とは?概要と種類
ZEHとはゼロ・エネルギー・ハウスの略。ZEHにはいくつか種類があり、それぞれに特徴があります。まずはZEHとはどんな家なのか、種類とともに見ていきましょう。
エネルギー収支がゼロ以下になるよう建てられた家
エネルギーを抑えたり創ったりすることによって、消費するエネルギーをゼロにできる家を「ZEH」と呼びます。「断熱性の高さ」「エネルギー消費を抑えられる設備の導入」「再生可能エネルギーの生成」などによって、省エネを実現します。
ZEHには、条件にあわせた複数の基準が設定されている
ZEHには、省エネ性能や立地条件にあわせた、複数の基準が用意されています。
一つ目は、「ZEH」。一次エネルギー消費量が基準から20%以上削減されている、ZEHロードマップにおける定義を満たす家のことです。
二つ目は、「ZEH+」。ZEHよりも高い省エネ性が求められ、省エネルギーと再生エネルギーの両方の措置が必須になります。
三つ目は、「Nearly ZEH」。寒冷地などの、ある特定の地域にのみ適用されるもので、「ZEH」の条件を全てクリアしていなくても構いません。
四つ目は、「ZEH Oriented」。十分な太陽光発電量が賄えないような狭小地や多雪地域に適用される基準です。太陽光発電システムが導入されていなくても、ZEHとして認定されます。
詳しくは、以下の「2022年の経済産業省と環境省のZEH補助金について」を参照してください。
ZEH補助金の種類と交付条件
新築住宅を建築・購入する個人を対象とした主なZEHの補助金は、ZEH支援事業・次世代ZEH+(注文住宅実証事業)・次世代HEMS実証事業の3種類です。それぞれの特徴と交付条件についてチェックしましょう。
ZEH支援事業
ZEH | ZEH+ | |
---|---|---|
申請 対象者 |
新築住宅を建築・構築する個人 新築住宅の販売者となる法人 |
新築住宅を建築・構築する個人 新築住宅の販売者となる法人 |
対象となる 住宅 |
ZEH Nearly ZEH ZEH Oriented |
ZEH+ Nearly ZEH+ ZEH Oriented+ |
交付要件の ポイント |
① ZEHロードマップにおける「定義」を満たす ② SIIに登録されているZEHビルダー、プランナーが関与(設計、建築または販売)する住宅であること |
① ZEHロードマップにおける「定義」を満たし、かつ以下の条件を満たすこと
1-1.省エネ基準から25%以上の一次エネルギー消費量削減 ② SIIに登録されているZEHビルダー/プランナーが関与(設計、建築、改修または販売)する住宅であること |
補助額 | 55万円/戸 蓄電システム導入の場合は加算あり |
100万円/戸 |
公募方法 | 先着方式 | 先着方式 |
次世代ZEH+(注文住宅)実証事業
申請対象者 | 新築住宅を建築する個人 |
---|---|
対象となる住宅 | ZEH+ Nearly ZEH |
交付要件のポイント | 「ZEH+に係る要件」を満たしていること且つ、 以下のいずれか1つ以上を導入すること 1.蓄電システム 2.V2H充電設備(充放電設備) 3.燃料電池 4.太陽熱利用温水システム 5.太陽光発電システム10kW以上 |
補助額 | 100万円/戸 蓄電システムや燃料電池などの導入で加算あり |
公募方法 | 先着方式 |
次世代HEMS実証事業
新築住宅を建築する個人 | 新築住宅を建築する個人 |
---|---|
対象となる住宅 | ZEH+ Nearly ZEH+ |
交付要件のポイント | 1.「ZEH+に係る要件」を満たし、かつ、 蓄電システムまたはV2H充電設備(充放電設備)の いずれかを導入すること 2. 更に、蓄電システム、V2H充電設備(充放電設備)、 燃料電池、太陽熱利用温水システムの設備を 導入することも可とする 3. 太陽光発電システムによる創エネルギーを 最大活用し、自家消費量を更に拡大することを 目的に、AI・IoT技術等による最適制御を行う 仕組みを備えていること |
補助額 | 112万円/戸 蓄電システムや燃料電池などの導入で加算あり |
公募方法 | 事前割当方式 |
「こどもみらい住宅支援事業」との併用はできない
似たような補助金で、国土交通省が主体の「こどもみらい住宅支援事業」があります。この支援事業は、子育て世代の支援を目的としており、「高い少エネ性能を有する新築住宅の取得や省エネ改修」に対して支給されます。ZEH支援事業との違いは、少エネ性能の段階を以下の3段階に分けており、ZEHの条件を満たさない省エネ住宅でも、補助対象となります。また、ZEH支援事業の補助金と「こども未来住宅支援事業」の補助金を併用して受領することはできません。
- ZEH、 Nearly ZEH、 ZEH Oriented の場合:100万円/戸
- 高い省エネ性能等を有する住宅:80万円/戸
- 一定の省エネ性能のある住宅:60万円/戸
ZEHのメリット・デメリット
申請する前に、ZEH住宅を建てるメリット・デメリットも把握しておくことが大切です。それぞれについて詳しく解説します。
メリット①光熱費を抑えられる
エネルギーの消費量を少なくできるので、光熱費の削減につながり経済的です。
メリット②家の資産価値が上がる
高気密・高断熱など、性能が高いだけでなく耐久性も高いので、住宅そのものの資産価値が上がります。
メリット③将来的に収支を黒字にできる
ZEHは、設備導入のために初期費用がかかるもの。しかし、補助金の活用や維持費の削減などによって支出分をカバーでき、将来的には収支をプラスにできます。
メリット④減税の対象になりやすい
家を建てると、所得税・固定資産税・登録免許税が発生します。しかし、ZEHは認定住宅としやすいため、これらが減税されるケースもあるようです。
メリット⑤「フラット35」の金利優遇を受けられる
2022年10月以降、脱炭素の実現に向け【住宅ローンの「フラット35」S】の省エネルギー基準が見直されました。「ZEH」等の基準に適合する場合「フラット35」の借入金利から当初5年間は年0.5%、6年目から10年目までは年0.25%の金利が引き下げられます。
詳しくは、以下の「住宅金融支援機構:【フラット35】S(ZEH)の技術基準のお知らせ」を参照してください。
※住宅金融支援機構:【フラット35】S(ZEH)の技術基準のお知らせ
デメリット①家づくりにしばりができる
条件を満たす家づくりをするためには、いくつかの制約があります。また、プランが豊富と言えども決められたものの中から選ばなければいけません。
デメリット②条件を満たさないと補助金申請できない
補助金を申請するには、決められた条件を満たす必要があります。場合によっては条件が通らないことも。この詳しい条件については次の段落で解説します。
ZEH補助金の申請に関する注意点
さまざまな魅力があるZEHですが、全ての申請が通るわけではありません。申請に関する注意点をしっかり把握しておきましょう。
交付決定前に着工した場合は申請できない
補助金が払われるのは、交付されることが決まってから着工に進んだ場合のみ。申請から着工までは、あらかじめ決められた順番で行う必要があります。もし、交付決定前に着工してしまうと、補助金の支払いの対象外となるため注意してください。
また、申請が通ったとしても、交付が決定するまでは着工できないため、場合によっては工期が後ろ倒しになることもあります。スケジュールが大きくズレないようにするためにも、ZEHの経験を積んだ会社に依頼するのがおすすめです。
ZEH補助金の申請方法と申請の流れ
補助金を受給するために、まず申請条件や手順などをしっかり把握しておく必要があります。ここでは、申請方法について解説します。
補助金を受け取れる対象者かチェック
対象者は、住宅を新築する人・新築住宅を購入する人のいずれかです。まずは自分が対象者に当てはまるかどうかを確認してください。
補助金の申請条件・公募期間をチェック
申請者が住宅所有者・居住者であることが前提です。それも含めた各補助事業の適用条件をしっかりチェックし、該当するかを確認しましょう。
また、申請は公募期間内に行う必要があります。期間・時期については年度によって異なるので、情報を随時チェックしてくださいね。
工事会社の決定・プラン作成
ZEH住宅を建てることが決まったら、対応可能な工事会社を探しましょう。設計を行い、プランを作成。詳細が決まったら、住宅ローンの申請に入ってください。
申請は工事会社が行う
補助金の申請は、依頼者側で行う必要はありません。依頼した工事会社が全て行うので安心して任せましょう。審査が通ると交付決定通知書が発行され、いよいよ着工に進みます。補助金の支払いは、目安として竣工後3ヵ月から半年程経った頃です。
メリットや補助金のシステムを理解し、ZEHを検討しよう!
ZEH住宅は光熱費が抑えられるなどのさまざまなメリットがある住宅。初期費用こそかかりますが、補助金の申請をうまく活用すれば、長い目で見て経済的です。申請するにはいくつかの細かい条件があるので、ZEHの申請や建築に慣れている工事会社を選びましょう。それらを十分理解した上で、ZEHを検討してみましょう。