家は一生に一度の買物ではなくなりつつあります。最近では、60代になってからより便利な場所に住み替える人も見られるようになりました。これから建てる家も将来売却する可能性はゼロではないため、できれば資産価値の下がりにくい家を建てておきたいところです。この記事は、「価値が下がりにくい注文住宅の建て方」について解説します。
執筆者 竹内 英二
不動産鑑定事務所および宅地建物取引業者の代表取締役。不動産鑑定士、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、公認不動産コンサルティングマスター(相続対策専門士)、中小企業診断士。大阪大学出身。
この記事の目次
住宅の価値は土地と建物の2つで決まる
不動産の価値は土地と建物の2つで決まります。注文住宅を建てる人は建物が資産価値を決めるという錯覚を覚えがちですが、土地も資産価値を決める重要な要素です。「価値が下がりにくい」という観点からすると、土地と建物では重要性は土地の方が高いといえます。理由としては、土地の価格は市況によって上がったり下がったりしますが、建物の価格は築年数の経過によって基本的に下落し続けるものだからです。土地は景気の良いときは、価格が上昇していきます。今購入した土地は、将来売却するときに価格が上がっている可能性もあります。もちろん、下がる可能性もあります。
一方で、建物は老朽化していくものであるため、築年数の経過に伴い価格が下落し続けます。今建てた建物は、将来売却するときは新築時よりも価格が下がっていることが通常です。土地のように、将来価値が上がる可能性は基本的にありません。建物の価値が下がっても、それ以上に土地価格が上がれば、結果的に価値が下がらない住宅となるため、土地選びは重要となってくるのです。ただし、建物も不必要に価値を下げないためにも、最低限、配慮していきたい要素はあります。売却しにくい建物を建ててしまうとさらに価値が下がってしまうため、中古住宅で買主が求めているニーズを意識しておくことがポイントです。
価値の下がりにくい土地の選び方
この章では価値の下がりにくい土地の選び方について解説します。
土地選びのポイント1.良い最寄り駅を選ぶ
土地購入でまず意識したいところは、「最寄り駅」です。「良い立地」という言葉を耳にすることもあると思いますが、「良い立地」とは実は「最寄り駅」でかなりの印象が決まります。良い駅とは、例えば「他路線に乗り換えが可能な駅」や「快速停車駅」、「本数の多い路線の駅」、「ターミナル駅」、「始発駅」等です。良い駅であれば、駅から10分以上離れているような場所でも、価格は比較的下がりにくくなります。
良い立地というと真っ先に「駅からの距離」を思い浮かべる人もいますが、「駅からの距離」の前に「どこの駅」かが重要になってきます。また、良い駅は周辺に商業施設も充実しているため、生活しやすい環境が自然と整っています。良い駅の近くの土地は価格が下がりにくいため、土地選びは「駅選び」から始めることをおすすめします。
土地選びのポイント2.学区が良く閑静な住宅街を選ぶ
価値の下がりにくい土地を購入するには、学区が良い住宅街の物件を選ぶこともコツです。それぞれの地域には公立の小中学校でも評判の良い学校というものが存在します。学区の良いエリアには毎年のようにその地域に引っ越してくる人がいますので、底堅い不動産需要が存在します。不景気になっても土地価格が下がりにくく、また景気が上向いたら真っ先に土地価格が上がっていくのが学区の良いエリアの特徴です。また、学区の良いエリアは、閑静で住環境の優れた住宅街も多くなっています。暮らしやすい環境が整っているため、自分の子供を通わせるかどうかは関係なく、土地は学区の良否を意識して選ぶのがいいでしょう。
土地選びのポイント3.間口が広く南向き接道の土地を選ぶ
土地の個性としては、間口が広く南向き接道の土地を選ぶことがポイントです。間口の広い土地は、駐車場や門扉の配置がしやすいため、間口の狭い土地よりも設計の自由度が上がります。道路が南向きであれば、日照条件もよくなります。また、土地は道路から50cm~1m程度高い方が排水勾配を取りやすく、トイレやバス等の自由な配置がしやすいです。できれば前面道路に歩道があると、安全な生活がしやすくなります。
さらに良い土地の条件としては、角地があります。角地は、日照や通風に優れるため、中間画地(一面しか道路に接していない土地のこと)よりも価値が高くなります。角地については、南面と東面に接している「南東の角地」が最も価値が高いです。
価値の下がりにくい間取りのポイント
この章では価値の下がりにくい間取りのポイントについて解説します。
間取りのポイント1.適切な部屋数を確保する
注文住宅を建てるには、まずは適切な部屋数を確保することが重要です。少なくとも3LDKとし、余裕があれば4LDKまたは3LDK+DEN(書斎)が望ましいといえます。中古の戸建て住宅を購入する人はファミリー世帯が多いため、必要な部屋数が揃っていないと、その時点で候補から外してしまう人が多いです。子供部屋や夫婦の寝室といった基本的な部屋数が確保されていないと売却しにくい場合があります。
また、最近ではリモートワークが普及したことから、仕事部屋も確保できる間取りの需要が増えています。子供が2人いる世帯の場合、3LDKだと仕事部屋が確保できないため、4LDKや3LDK+DENといった間取りが求められます。無理に部屋数を増やす必要はありませんが、極端に部屋数の少ない家は売りにくくなることは意識しておきましょう。
間取りのポイント2.標準的な面積は確保する
売りやすい物件とするには、標準的な面積は確保することがポイントです。戸建ての一般的な広さは、延床面積が30~35坪程度となります。面積の狭い家も売却時に需要者層の検討候補から外れる傾向があります。ファミリー層のニーズに応えるためにも、ある程度の広さは確保しておくことをおすすめします。
間取りのポイント3.リビングは広くする
リビングは広くすることも家づくりの基本です。リビングは日照条件の良い場所に配置し、広めに作っておくと売却時の家の印象が良くなります。リビングの広さは、目安として12畳以上あることが望ましいといえます。ただし、広過ぎるリビングは空調が非効率となります。広過ぎは逆効果ですので、常識の範囲を保つことも意識したいポイントとなります。
またこのほかにも、住宅展示場に出展している会社の建物であれば、ネームバリューや性能保証により、比較的価値が下がりにくい傾向にあります。
完璧を求め過ぎないことも成功の秘訣!
注文住宅を建てる際は、完璧を求め過ぎないことも成功の秘訣です。そもそも不動産には、すべての条件が完璧なものは存在しません。優先順位を意識しつつ、許容できる範囲の中で少しずつ譲歩していくことも家づくりのコツといえます。
例えば、最寄り駅もターミナル駅は良い駅ですが、ターミナル駅の周辺は土地価格が高く購入しにくいです。そこで、ターミナル駅から一駅離れた駅も検討してみると、購入できる土地が見つかることがあります。一駅だけであれば生活環境は大きく変わらないため、十分に許容できる範囲です。
また、建物も将来リフォームで改善できる部分であれば、仕様を下げたものを選択するという考え方もあります。
完璧を求め過ぎるとなかなか決断できませんので、予算と折り合いをつけながら柔軟に検討していくと良いでしょう。
お近くの展示場を検索
大手住宅メーカーの最新モデルハウスが立ち並ぶ住宅展示場なら、多様なニーズに応える理想の家のアイディアが豊富にあります。採光や間取りをチェックしながら、理想の暮らしを相談してみましょう。
まとめ
以上、価値が下がりにくい注文住宅の建て方について解説してきました。
住宅の価値は土地と建物の2つの要素で決まりますが、価値の下がりにくい家を建てるには特に土地選びが重要です。土地は、最寄り駅や学区を意識して選ぶことがコツとなります。
建物は、適切な部屋数や標準的な広さは確保し、リビングは広くしておくと売却しやすくなります。注文住宅は完璧を求め過ぎないことも適切な心掛けです。
価値が下がりにくくなる要素を意識しながら、柔軟な譲歩も取り入れていくことが家づくりの秘訣となります。