傾斜地は活用できる? 住宅を建てるメリットと注意点を解説

2023年3月27日

傾斜地は眺望が良いので「お気に入りの景色を生活に取り入れたい」という方に、人気の土地です。

しかし、平坦な土地に比べて土砂崩れなどの危険性があるため、傾斜地を活用する際は注意が必要です。

ここでは傾斜地活用のメリットと注意点を解説します。

「傾斜地」とはどのような土地を指す?

「傾斜地」とはどのような土地を指す?

「傾斜地」とは、文字のままの意味で捉えると「斜めに傾いている土地」です。

所有している土地や購入を検討している土地の傾斜の角度が急だと、「この土地は傾斜地なのか? 崖なのか?」と不安に感じる方もいるでしょう。

実は、建築基準法や各条例では「傾斜地」についての特別な記載はなく、「崖」のみが扱われています。

どのような状態が「崖」に該当するのか、詳しく見ていきましょう。

建築基準法には「崖」についてのみ記載されている

建築基準法第19条4項では、以下の通り、崖についての記載があります。

建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。

引用:建築基準法第19条(敷地の生成及び安全)4項より

ただし、崖の角度や条件などは記載されていないため、明確に定義されていません。

地方自治体によって「崖」についての条例がある

神奈川県や愛知県など、崖についての条例を定めている地方自治体もあります。

崖について定義している部分を以下に抜粋しますので、さっそく見てみましょう。

例に挙げた条例では、共通して30度以上の傾斜地が崖に区分されています。

「急傾斜地崩壊危険区域」を指定している地方自治体もある

条例で崖を定義していなくても、「急傾斜地崩壊危険区域」に指定している地方自治体もあります。

急傾斜地崩壊危険区域とは「崩壊するおそれのある急傾斜地」を指し、「傾斜度が30度以上の土地」です。

また、急傾斜地に隣接する土地のうち、急傾斜地が崩れないように一定の行為制限をしなければならない土地も、急傾斜地崩壊危険区域に該当します。

地域によっては所有している土地や購入を検討している土地が急傾斜地崩壊危険区域に該当していないか、確認が必要です。

傾斜地を活用するメリット

傾斜地を活用するメリット

傾斜地は、傾斜の角度が急かどうかだけでなく、崖や急傾斜地崩壊危険区域に該当しているか確認しなければなりません。

だからといって、傾斜地には家を建てられないわけではありません。どのような建築物がどのような条件で建てられるかを確認しましょう。

傾斜地ならではのメリットもあります。参考にしてくださいね。

土地代が比較的安い

傾斜地の土地は、土地を平らにする工事費用が発生するものの、平坦な土地よりも比較的安いことが多いです。

安全に住宅を建てるためには、地盤改良や擁壁(コンクリートブロックや石などで作った壁)の設置などの工事が必要になる場合もあります。

しかし、傾斜のある土地自体は安く購入できるため、なるべく土地代を抑えたい方にとっては嬉しいポイントでしょう。

眺望が良い

眺望の良さを希望している方にも、傾斜地はおすすめです。

高台の傾斜地であれば、周辺に視界を遮るものもなく、景色を楽しめます。

ロケーションによっては、自宅から海を一望できたり、花火大会を鑑賞できたりする場所も。

お気に入りの景色を眺めながら暮らせると、その日の疲れも取れて、リフレッシュできそうですね。

また、傾斜地に賃貸用のマンションやアパートを建てたい方にとっても、眺望の良さは入居者に対してアピールポイントになります。

日当たり、通風が良い

日当たりや通風の面でも、傾斜地のメリットが感じられるでしょう。

周辺に遮る建物がほとんどないため、太陽の光が妨げられず、家の中にたっぷりと光が差し込みます。

太陽の位置に合わせてリビングを配置すると、常に明るい居住空間を作れるでしょう。

日当たりに合わせて、サンルームや物干し場を設置する家庭も見受けられます。

また、隣家とも高低差があるため風通しがよく、湿気や結露を防ぐ効果も期待できるでしょう。

地下室やビルトインガレージなどを作れるため、床面積が広がる

地下部分を活用した地下室やビルトインガレージなどは、傾斜地ならではの活用方法です。

傾斜地に住宅を建てる場合、建物部分は平らにして、基礎を深くしなければならないため、必然的に地下部分ができます。

地下室は遮音性が高いことから、音楽や映画を大音量で楽しむことも夢ではありません。ビルトインガレージでは、趣味の自動車やバイクを存分に楽しめますよね。

平地の住宅とは、一味違う家づくりができる点が魅力です。

地下室の床面積について

建築基準法第52条3項において、天井が地盤面から高さ1メートル以下に設置されている部分の床面積は、住宅全体の床面積3分の1までは算入しないとされています。

わかりやすい例で説明します。

住宅を建てる際、敷地面積に対する住宅の延べ床面積の割合(容積率)が定められています。

例えば、以下の傾斜地に住宅を建てる例で考えてみましょう。

  • 土地面積100平方メートル
  • 容積率200%の傾斜地

上記の例だと、床面積が200平方メートルの住宅部分以外に、100平方メートルまでの面積の地下室を設置可能です。

100平方メートルまでは算入されないため、床面積を広くとれます。

なお、都市計画における用途地域によって容積率の数値は異なるため、ハウスメーカーや地方自治体に確認しながら、地下室やビルドインガレージの設計計画を立てましょう。

傾斜地活用におすすめの3つの用途

「所有している傾斜地を、どのように活用したら良いのだろう?」と悩む方も多いでしょう。

ここからは、傾斜地を活用する際におすすめの用途を3つ紹介します。

戸建て住宅

戸建て住宅

傾斜地ならではの眺望のよさや通風性などを活かし、戸建て住宅として活用する方法です。

前章で紹介したように、地下室やビルトインガレージなど地下部分を活用した家づくりができる点も魅力ですね。

住宅を建てる際は、地盤改良や擁壁などが必要になる場合もあるため、ハウスメーカーなどと相談しながら計画を進めましょう。

賃貸マンションやアパート

傾斜地に、賃貸用のマンションやアパートなどの集合住宅を建てる例も少なくありません。

傾斜地ならではの眺望の良さや日当たりなどは、賃貸用住居のアピールポイントになります。

集合住宅の場合、ある程度の戸数を作ることで安定した収益が期待できるでしょう。

また、大学やオフィス街が近い場所なら単身用、小学校や中学校が近い場所ならファミリー向け、などとニーズに合わせた部屋を作ると空室防止につながります。

ただし、戸建て住宅と同様に、建築の際には地盤や擁壁などには注意が必要です。

建物自体が大きくなると、さらに頑丈な地盤や擁壁が必要になり、費用がかかってしまうことも考えられます。

駐車場

駐車場

傾斜地は、駅に近い場所ならコインパーキング、住宅街に近い場所なら月極駐車場のニーズが見込めるでしょう。

傾斜地を駐車場にする場合も、住宅と同様に、地盤改良や擁壁設置などが必要となります。

駐車場経営をする方は、万が一、土砂崩れなどの災害で利用者の自動車が被害に遭った場合に備え、事前に損害賠償保険に加入しておくと安心です。

リスクを回避して傾斜地を活用するポイント

リスクを回避して傾斜地を活用するポイント

傾斜地は戸建てや賃貸マンションなどの用途に活用できますが、地盤の状態によっては災害時に土砂崩れを起こすリスクもあります。角度のある土地ならではの注意すべきポイントを意識しましょう。

調査会社や不動産会社、ハウスメーカーの担当者に確認し、工事の記録も見せてもらいながら、紹介する内容について確認すると安心です。

「急傾斜地崩壊危険区域」に指定されていないか確認する

急傾斜地崩壊危険区域に住宅を建てる時は、大雨や台風の際に土砂崩れなどの危険性をはらんでいるため、地方自治体の許可を得なければなりません。

また、急傾斜地崩壊危険区域内では、急傾斜地の崩壊を助長、誘発するリスクのある行為は禁止されています。

住宅を建てる時だけでなく、リフォームの際にも制限が設けられている場合もあるため、急傾斜地崩壊危険区域に該当していないかどうか確認しましょう。

急傾斜地崩壊危険区域に指定されている場所には、標識が設置されています。

また、所管の土木事務所や治水事務所でも確認できますよ。

なお、冒頭で解説したように、崖と急傾斜地崩壊危険地域については以下の違いがあります。

地方自治体で、崖についての条例があるかも確認すると安心ですね。

  • 崖:角度や条件は明確に定義がないが、自治体ごとに角度を定義している
  • 急傾斜地崩壊危険区域:崩壊する恐れのある30度以上の傾斜地、一定の行為制限がある

必ず地盤調査を行う

土地によっては地盤がゆるく、住宅が倒壊する恐れもあるため、地盤調査は必ず行いましょう。

地盤の安全性が確保できなければ、地盤を頑丈にするための地盤改良などの工事が必要です。

また、住宅が傾かないように地盤を平坦にする工事も必要になるため、その分費用がかかります。

擁壁の安全性を確認する

傾斜地を活用する際は地盤のほか、擁壁の安全性も確認しましょう。

擁壁は斜面が崩れないようにすることが目的ですが、擁壁が劣化すると効果がなくなってしまうことを忘れてはいけません。

擁壁が崩れてしまうと、上に建っている住宅が損傷したり、倒壊したりするリスクがあります。崩れた擁壁は、隣家や周辺の土地などに損傷を与える可能性があります。

もともと傾斜地に擁壁がない場合は、自分で擁壁を設置しなければなりません。

専門の業者に依頼し、事前に擁壁の安全性を確認したり、擁壁がある傾斜地かどうか調査したりしましょう。

宅地造成等規制法改正後に造成されたか確認する

「宅地造成等規制法」とは、土地の造成による崖崩れや土砂崩れなどの災害を防止するため、各規制を定めた法律です。

宅地造成等規制法は1962年に施行されましたが、兵庫県南部地震や新潟県中越地震の被害を背景に、2006年に災害対策を強化する内容へと改正されました。

宅地造成等規制法の対象には、傾斜地も含まれています。

2006年より前に造成された土地については、以前の土地保有者や造成に関与した不動産会社、不動産調査会社などに造成方法を確認しましょう。

もし、適切な方法で土地が造成されていないと、自分で造成しなおす必要があります。

土地代は安くても造成代が高額になるケースもある

傾斜地活用では、地盤改良や擁壁設置などをしなければならないことも、珍しくありません。

また、宅地造成等規制法改正後に造成されたかによっては、さらなる造成工事が求められることもあります。

土地は安く購入できても、造成にかかる費用が高額になることがあるため、傾斜地を活用したい方は念頭に入れておきましょう。

傾斜地の土地活用の実績があるハウスメーカーに相談しよう

<まとめ>傾斜地の土地活用の実績があるハウスメーカーに相談しよう

傾斜地は、眺望の良さや日当たり、通風性などのメリットがあります。

また、地下室やビルトインガレージなど地下部分を活用した独自の家づくりが楽しめる点も魅力です。

一方で、傾斜地を安全に活用するためには、しっかりとした土地造成が必要です。

傾斜地を活用する際には、土地の地盤や擁壁を調査し、適切な造成を行いましょう。

「急斜面の土地を持っているが、活用できるのだろうか?」や「傾斜地を購入したいが、家を建てる際の注意点はある?」という方は、ハウスメーカーで相談してみませんか?

専門的な立場から適切な手続きや造成をサポートしてくれるので、安心ですよ。