1つの建物に店舗部分と住居部分がある「店舗併用住宅」は、自宅でカフェやサロンを開きたい方にぴったりです。
「いつか自宅兼店舗を持てたら」と憧れを抱いている方や「1階をテナントとして貸し出したい」と考えている方へ、店舗併用住宅で快適に過ごすためのポイントや気になるローンについて解説します。
この記事の目次
店舗併用住宅とは?
店舗併用住宅とは、1つの建物に店舗部分と居住部分が入っている住宅のことです。
例えば、1階でカフェを経営し、2階を住まいにして家族で暮らすケースがあります。
あるいは、1階を事務所として使いたい人に貸し出し、2階以上を住居にするパターンもあるでしょう。
建築基準法における定義
店舗併用住宅とは、室内で行き来できるかは関係なく、1つの建物に店舗部分と居住部分がある住宅を指します。
建築基準法では、低層住宅のための「第一種低層住居専用地域」と指定された地域には店舗併用住宅を建てられません。
その他の用途地域(都市計画法に基づき建築できる建物の用途を定めた地域)には、床面積や業種の制限こそありますが、建築可能と定義されています。
店舗兼用住宅との違い
「店舗併用住宅」と似たものに「店舗兼用住宅」があります。店舗併用住宅と店舗兼用住宅の主な違いは、「室内で行き来できるかどうか」です。
店舗兼用住宅は、住宅と店舗などの非住宅部分が構造的にも機能的にも一体となっていて、分離しにくい住宅とされています。
また、店舗兼用住宅は、店舗部分を他人に貸し出すことができないことも、店舗併用住宅との違いの1つです。
また、店舗兼用住宅は非住宅部分の床面積が50平方メートル以下かつ建物の延べ面積の50%未満と決まっています。
以下の用途目的であれば、用途地域の1つである「第一種低層住居専用地域」に建てられることも、大きな違いです。
- 事務所
- 日用品の販売を主な目的とする店舗や、食堂、喫茶店
- 理髪店や美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋などに類似するサービス業の店舗
- 洋服店や畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店などに類似するサービス業の店舗
- 自家販売のために食品製造業(食品加工業を含む)を営むパン屋や米屋、豆腐屋、菓子屋などに類似する店舗
- 学習塾や華道教室、囲碁教室などに類似する施設
- 美術品または工芸品を製作するためのアトリエや工房
※上記のいずれの場合でも、原動機を使用する場合は、出力合計が0.75キロワット以下のもののみ
参考:建築基準法施行令 第130条の3 | 建築基準法施行令 | e-Gov法令検索
店舗併用住宅の用途
店舗併用住宅は、主に自宅で開業するケースと、テナントとして貸し出すケースに分かれます。
それぞれの具体的な活用法をお伝えしますので、店舗併用住宅を検討している方は、ぜひ参考にしてくださいね。
自宅で開業する
店舗併用住宅に多く見られる業種は、以下の通りです。
- カフェ
- 美容室
- サロン
- 事務所
- クリニック
カフェ経営をしたい方でしたら、1階をカフェにして、2階以上を吹き抜けやロフトのある、ゆったりした間取りにしたり、美容室を経営したい方は、1階を美容室と親世帯、2階を子世帯の二世帯住宅にしたりと、夢を叶える家づくりが可能です。
テナントとして貸し出す
店舗併用住宅は店舗兼用住宅と違い店舗と住宅が分離されているため、テナントとして貸し出す使い方もできます。
テナントとして貸し出すことを前提としているなら、人通りが多いなど、集客が期待できる立地に建てることが重要です。
需要のないエリアでは、借り手が見つからない恐れがあります。
賃料を見込んで店舗併用住宅を建てるケースもあると思いますが、賃料は建築費や住宅ローンの額から割り出さず、周辺の相場に合わせて決めましょう。
店舗併用住宅のメリット
店舗併用住宅のメリットは、以下の通りです。
- 自宅で開業する場合はテナント料がかからない
- 自ら開業すれば通勤の必要がない
- 業種によっては子どもを見ながら仕事ができる
- 条件をクリアすれば固定資産税の軽減措置を受けられる
- テナントとして貸し出すことで賃料を得られる
- テナントを入れる場合は建築費を抑えられる可能性がある
店舗併用住宅なら、開業時にテナントを他から借りるわけではないため賃料がかかりません。
他の人へ貸し出すケースでは、賃料を得られます。
テナントとして貸し出すことが決まっている場合、内装や設備は借り手が担当することが多く、建築にかかる費用を抑えられます。
また、店舗併用住宅で自ら開業するのなら、自宅がある2階から仕事場の1階に移動するだけで済むため、電車などを利用した通勤はありません。
業種や環境によっては、子どもに目が届く場所で仕事をすることも可能です。
固定資産税の軽減措置を受けられるのもメリットですが、併用住宅で固定資産税の特例を受けるには、新築で居住スペースが建物の総床面積の4分の1以上であることが条件です。
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店舗併用住宅のデメリット
一方で、店舗併用住宅には以下のようなデメリットもあります。
- 立地が悪いと集客が見込めない
- 近隣からクレームがくる可能性がある
- 専用住宅と比べて建築費がかかる
- 売却しづらい
静かな住宅街に建てる場合は近隣に迷惑をかけないよう、お客さまを外に並ばせない工夫をしたり、夜に賑やかになりすぎないよう営業時間を短くしたりする必要があります。
また、店舗併用住宅は一般的な住宅より需要が少ないため、売却しづらいのもデメリットです。
将来、店を畳むときに店舗部分をテナントとして貸し出すのか、居住スペースを広げるのか、あるいは二世帯住宅にするのか、用途を考えておくとよいですね。
店舗併用住宅のローンと控除
基本的には、店舗併用住宅を建てる際に、住宅ローンを利用できるのは居住部分のみです。店舗部分は自己資金で賄うか、事業用ローンを申し込むことになるでしょう。
ただし、居住部分が建物全体の半分以上を占め、かつ店舗部分を自らが使用する場合に限り、住宅ローンを利用できるとする金融機関もあります。
事業用ローンよりも金利が低く借入期間を長期に設定できるため、月々の返済額を抑えられるでしょう。
住宅ローン控除は受けられる?
住宅ローンの年末残高の合計額等を基として計算した金額が、各年分の所得税額から控除される制度を住宅ローン控除(正式には住宅借入金等特別控除)といいます。
店舗併用住宅でも住宅ローン控除を受けられますが、対象となるのは居住部分のみです。店舗部分にも住宅ローンを利用している場合は、以下の計算式を用いて、居住部分が占める割合を算出する必要があります。
- 居住部分が占める割合=居住部分の床面積 ÷ 建物全体の床面積 × 100
住宅ローン控除を受けるには条件があるため、満たしているか確認しておきましょう。以下は、主な条件です。
- 住宅取得日から6カ月以内に住み始めている
- 控除を受ける年の12月31日まで引き続き居住している
- 床面積が50平方メートル以上(※2023年末までに建築確認を受け、所得が1,000万円以下であれば40平方メートル以上)である
- 総床面積の2分の1以上が自己の居住用である
- 控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下である
- 住宅ローンの返済期間が10年以上ある
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店舗併用住宅で快適に暮らすためのポイント
店舗併用住宅を建てる際、重要なのは家族が快適に暮らせる空間をつくることです。
お客さまが店舗にいても、家族が気兼ねなく生活できるよう、動線などを設計段階から工夫しましょう。
大切なポイントを5つお伝えします。
店舗と住居の出入り口を離す
店舗併用住宅では、店舗部分と居住部分の出入り口は別々につくられます。
2つの出入り口が近くにあると家族とお客さまが顔を合わせる可能性があり、セキュリティ面においても集客面においてもおすすめできません。
例えば、お店の営業時間中に、子どもがひとりで留守番していることがオープンになってしまうと危険です。
また、美容サロンやクリニックなど、業種によってはお客さまに「入りづらい」と思わせてしまうリスクがあります。
家族の安全を守るため、お客さまに気まずい思いをさせないためにも、出入り口を表側と裏側に配置するなど、できるだけ離したほうがよいでしょう。
間取りを工夫して家族のプライバシーを守る
子どもが遊ぶ姿や干している洗濯物など、お客さまに見られたくないものもありますよね。店舗を訪れているお客さまに家族のプライバシーが漏れないよう、最大限の工夫をしましょう。
例えば、店舗から庭や住居内が見えないように窓の位置に気を付ける、あるいは窓を付けない、塀やグリーンで目隠しをするなどの工夫が挙げられます。
騒音対策をする
業種にもよりますが、店舗にお客さまがいると賑やかな話し声であふれることもあるでしょう。
集客に成功しているともいえますが、居住部分にゆっくりくつろぎたい家族や眠っている赤ちゃんがいるご家庭では、あまり喜ばしいことではありませんよね。
店舗併用住宅を建てる際は、壁や窓を防音仕様にして対策するとよいでしょう。
子どもたちの声が店舗に漏れる心配も減りますよ。
屋上を有効活用する
屋上を、家族のプライベート空間として確保する方法もあります。子どもの遊び場や洗濯物を干す場所として使えます。
お客さまの目線に触れさせないことで生活感が出ないため、店舗のイメージも守れるはずです。
屋上リビングのメリット・デメリットは?快適に過ごすためのコツもご紹介
ここでは、屋上をリビングのように生活空間に取り入れる「屋上リビング」のメリット・デメリットをお伝えします。快適に過ごすためのコツやおすすめのインテリアもご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
セキュリティを重視する
店舗には現金や金庫があることが多いため、専用住宅よりセキュリティを高める必要があります。
防犯カメラや窓用の防犯フィルムなどを使って、家族が暮らす場所として、またお客さまが安心して過ごせる場所としての安全性を高めましょう。
集客力と利便性を高めるためのポイント
店舗併用住宅においては、住宅としての快適さだけでなく、店舗としての集客力と利便性も大切になってきます。
集客が見込めなければ「思ったほど収入を得られない」「テナントが見つからない」と後悔することになりかねません。
店舗併用住宅を設計するときに気を付けたいポイントを4つお伝えします。
1階(店舗部分)の天井を高くする
カフェや美容院などは、天井を高くして開放的な雰囲気を演出すると、入りやすい印象になります。
狭いスペースでも広く見えるため、圧迫感がありません。
高い天井は、お客さまに長時間滞在してほしい業種に向いているといわれています。
カフェならランチや友だちとの集まりに利用したくなるでしょうし、美容院なら時間のかかるパーマやカラーリング中も気持ちよく過ごしていただけるでしょう。
居心地のよい店舗にするための工夫としておすすめです。
駐車場・駐輪場を確保する
集客を望むなら、遠方からも来られるように駐車場や駐輪場の確保も必須です。
お客さまが路上駐車してしまうと、近隣住民に迷惑がかかります。
駐車場のための土地がなく難しいようであれば、近くの月極駐車場を契約するなどして用意しましょう。
住居部分とは別のトイレをつくる
店舗併用住宅では室内での行き来ができないため、店舗部分にも専用のトイレを設置できるとよいですね。
特に、カフェなどお客さまが長時間いらっしゃる業種には必須です。
設計時にあらかじめ組み込んでおきましょう。
バリアフリーを意識して設計する
ベビーカーや車椅子でも入りやすいよう、店舗の入り口には階段だけでなくスロープも用意するなど、バリアフリーを意識して設計しましょう。
業者も出入りしやすくなり、自分たちがものを運び込むときも便利ですよ。
店舗併用住宅の相談は信頼できるハウスメーカーへ
自宅と同じ建物でカフェやサロンを開きたいと考えている人にとって、店舗併用住宅はまさに夢の物件ですよね。
大切なのは、快適に暮らすためのポイントと集客に効果のあるポイントの両方を押さえることです。
信頼できるハウスメーカーに相談して、理想の家づくりを実現してくださいね。
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