親の土地に家を建てる時のトラブル事例!リスク回避ポイントを解説

2023年3月31日

住宅建築には当然ながら土地が必要です。両親が所有する土地に、家を建てるケースもあるでしょう。
ただし、深く考えずに進めてしまうのは要注意!
思わぬトラブルが発生するかもしれません。
ここでは、親の土地に家を建てる時のトラブル事例や、リスク回避ポイントを解説します。

親の土地に家を建てる時に起こりえるトラブル事例

親の土地に家を建てると決めた時、どのようなトラブルが起こるのでしょうか。
よくあるトラブル事例を4つ紹介します。

【事例1】親の死後、兄弟間の相続トラブルの元に

親の存命中はトラブルがなくても、親が亡くなった後に表面化する厄介な事例もあります。
1番問題になりやすいのが、兄弟間の相続トラブルです。

遺産相続の際に、土地の評価額と同等の現金や有価証券などの金融資産があればよいかもしれません。
しかし、親の資産の大部分を土地が占めるケースでは、問題が起きやすいでしょう。
遺産分割の調停や審判を行うことになったり、家を手放すはめになってしまったりなど、相続争いの原因になった事例もあります。

【事例2】親から干渉を受けてトラブルへ発展

建築プランやローンの組み方をはじめ、家の完成後には生活面への口出しが増えて、家族間のトラブルに発展した事例です。
仮に土地に対する対価を払っていたとしても、親は土地を提供したことで共有意識を持ちやすいのでしょう。
とくに相手が義理の両親であれば立場的にも意見しにくく、大きなストレスがかかることも否めません。

【事例3】離婚による財産分与でトラブル発生

離婚が決まった際にも、トラブルが起きやすいです。
離婚による財産分与では原則夫婦で2分の1ずつ財産を分けるため、共同財産である家をどうするか話し合いが必要となります(家も親名義となっている場合は財産分与の対象外)。

離婚による財産分与のために家を売却したいと思っても、土地が親名義のままであれば、許可なく売却はできません。

親が売却に同意すれば、土地を含めた家全体が売れます。その際、売却額のうち、家の評価額のみが夫婦の財産分与の対象となります。

親が土地の売却に合意しなければ、家だけの売却も可能です。その場合、借地権つきの建物として売却することになります。
家だけの売却であれば、土地は親名義のまま残せます。

【事例4】夫(妻)が親より先に死亡し、残された配偶者や子どもが住みにくい

親の土地に家を建てた子どもが、親より先に事故や病気で死亡する事態もないとはいいきれません。
残された配偶者からすれば、家は自分のものでも、土地は死亡した配偶者の両親のものです。
さらに、亡くなった配偶者との間に子どもがいなければ、義両親も亡き配偶者の遺産の相続人となります。
そのため、家をどのように相続するか義両親と遺産分割協議を行う必要があります。
配偶者としては不安定な立場に置かれ、住みにくくなることは否めません。

トラブル事例のリスクと比較!親の土地に家を建てるメリット

親の土地に家を建てた時に起こりえるトラブルを確認したところで、親の土地に家を建てるメリットを紹介します。
トラブル事例から考えられるリスクよりもメリットが上回るケースでは、後述する対策を取りながら親の土地に家を建てることを検討してみましょう。

土地代を節約できる

親の土地に家を建てる最大のメリットは、土地代の節約です。
親から土地を提供してもらえば、多くの場合土地代は無料、もしくは有料だとしても不動産市場から買うより安く済ませられます。

住宅ローン審査に通りやすい

親の土地に家を建てるケースでは、土地代が節約できる分、住宅ローンの借入額も少なく抑えられます
住宅ローンの借入額が少ないことと合わせて、建築予定の家と親の土地に担保をかけられるため、審査に通りやすくなるでしょう。

建築費用に予算を割きやすい

土地代が節約できた分、建築費用に予算を割きやすくなります
土地購入もあわせて住宅建築を考えていたら諦めてしまうような希望も、建築プランに加えられるでしょう。
そのため、自分たちの理想により近い住宅を建てられる可能性が高くなります。

親から生活のサポートを受けられる

親からの干渉増加という家族トラブル発生のリスクがある一方、親が近くにいて助かるケースも多くあります。
特に子どもがいる方にとって、自分が体調不良の時や、夫婦どちらかが休日出勤しなければいけない時に、子どもを預かってもらうこともできるでしょう。

相続トラブル発生のリスク回避!親の土地に家を建てる前に知るべき税金の話

親の土地に家を建てる前に、知っておきたいのが未来を想定した税金対策です。
どのようなケースでどのような税金が発生するかをあらかじめ把握することで、親や家族との話し合いもスムーズになりますよ。
ここでは、トラブル発生のリスクを回避するために、事前に知っておきたい税金について説明します。

親の土地に家を建てた時にかかる税金<ケース別>

親の土地に家を建てるにはさまざまな方法があります。状況によって親や自分にかかる税金が変わるので、確認していきましょう。

以下が主なケースと、親や子にかかる税金の種類です。

  1. 親から土地を無償で譲り受ける場合:(子)生前贈与、不動産取得税、贈与税
  2. 親の土地を格安で購入する場合:(子)不動産取得税、贈与税、(親)譲渡所得税
  3. 親から無償で土地を借りる場合:(子)相続税
  4. 親から有償で土地を借りる場合:(子)相続税(※贈与税の場合もある)、(親)所得税
  5. 親の土地に二世帯住宅を建てる場合:(子)相続税

参考:タックスアンサーコード一覧|国税庁
参考:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁
参考:所得税|国税庁
参考:総務省|地方税制度|不動産取得税

贈与税は親の生前中、相続税は親の死後にかかる税金です。
贈与税より相続税のほうが税率は低いため、金銭的な面では基本的に相続税のほうが負担の少ないケースがほとんどでしょう。
ただし、将来的に土地の評価額が上がるかもしれないケースや、トラブル発生のリスク回避のためなど、状況に応じて当てはまる項目が変わります。
相続に詳しい専門家に相談しながら、自分にとって最適な方法を見極めることが重要です。

制度・特例で節税対策も

親の土地に家を建てる時に、大きく関わってくるのが贈与税や相続税です。制度利用や特例を受けることで、節税対策につながります。
ここでは、要件が合えば適用できる「相続時精算課税制度」と「小規模宅地等の特例」について解説します。

相続時精算課税制度

「相続時精算課税制度」は、贈与を受けた時には軽減された贈与税を払い(累計2,500万円以上の贈与の場合)、実際に相続が起きた時に先に贈与された財産と相続した財産を合算して相続税額を求め、支払った分の贈与税を引いて精算する制度です。
原則として60歳以上の親・祖父母から18歳以上(贈与を受けた年の1月1日時点)の子・孫へ生前贈与をする際に選択できます。
なお、特別控除があるため、累計2,500万円まで贈与税が非課税になります。

加えて2024年からは新制度により、年間110万円までなら贈与税がかかりません。贈与税の申告も不要です。
さらに、相続財産としても加算されないため、後に相続税も発生しません。

ただし、相続時精算課税制度を利用すると、贈与税の暦年課税制度を使えなくなるため注意が必要です。
暦年課税制度と比較した上で、利用を検討するとよいでしょう。。

参考:「No.4103 相続時精算課税の選択」|国税庁

小規模宅地等の特例

「小規模宅地等の特例」は、相続などで得た財産のうち、故人(ここでは親)が事業用または居住用に所有していた小規模な宅地について、要件が合えば最大80%まで評価額を減額できる制度です。
故人の居住用宅地を相続した配偶者や、故人の居住用の宅地を相続して相続税の申告期限まで住んでいる同居親族がいる方は、80%減額されます。

参考:「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」|国税庁

トラブルを回避!親の土地に家を建てる時のポイント

トラブルを回避するために、親の土地に家を建てる時のポイントを紹介します。
確認して、家族の話し合いやトラブルが起きた時の対策に役立てましょう。

親の土地の名義を確認、名義変更の検討

親の土地に家を建てる際には、土地の名義は前もって必ず確認しましょう。
土地の名義が祖父母など親以外の名義になっていることも、ないとはいいきれません。

相続トラブル対策として、土地の名義を親から自分へ変更する方法もあります。
親名義のままだと、親の死後に相続手続きをするときに遺産として扱われるため、兄弟間で相続トラブルの元になる可能性もあるでしょう。

相続トラブル対策のために土地の名義を親から自分に変更するなら、親から土地を無償で譲り受ける(生前贈与)か、土地を親から格安で購入する手段が考えられるでしょう。
土地を親から購入するケースでは、一般的な相場より安く購入すると、各税務署の判断により「みなし贈与」となります。

生前贈与は土地価格が基礎控除額の110万円を超えたとき、みなし贈与(※)による土地継承、いずれのパターンでも贈与税がかかることを覚えておかなければなりません。
(※みなし贈与は土地を譲った価格と時価との差額分に贈与税が課税)

相続税より贈与税のほうが高いというデメリットはありますが、相続トラブルの対策として選択するのも一考です。
ただし、無償で贈与を受けた際は兄弟でトラブルに発展する可能性もあるため、前もって親族間で話し合っておくとよいでしょう。

実家の敷地内に家を建てる場合は、分筆や分割を行う

親の土地に家を建てる時には、ご自分の状況や必要に応じて「分筆」や「分割」の手続きを行うと安心です。

前提として、住宅は建築基準法により1つの土地に対して1つ建てるという原則があります。
上記をもとに考えると、親の土地に家を建てる時は、何らかの方法で敷地を分けなければいけません。
土地を分ける方法として、登記簿上で土地を分ける「分筆」と、建築基準法における「分割」の考え方を覚えておく必要があります。

「分筆」:不動産登記上、敷地を2つ以上に分ける手続きを行い、所有者を登録する手続きです。境界確定測量が必須で、手続き時間も費用もかかります。抵当権の範囲を限定したいときや、土地状況により固定資産税を節税したいときに行うことが一般的です。
「分割」:建築確認申請の際、住宅建築の基準を満たすように図面上において土地を2つ以上に分ける手続きです。分筆と比較すると手続きが簡単で費用も抑えられます。

親の土地に家を建てる時は、土地の「分筆」や「分割」を行うことが一般的です。
しかし、親の土地に家を建てた時に行う手続きの煩わしさから「分筆」を行わないケースでは、住宅ローンの担保に実家の建つ土地も含まれてしまいます。
万が一、住宅ローンが払えなくなれば、実家まで手放さなければならなくなる可能性があるため注意が必要です。
ただし、状況によっては「分筆」または「分割」のみでも問題なかったり、「分筆」と「分割」両方手続きしたほうがよいこともあります。
専門家と相談したうえで、ご自分に合った手続きを行うことがおすすめです。

親に遺言書を書いてもらう

兄弟間の相続トラブル発生のリスクを避けるために、親に遺言書を書いてもらうのは有効な手段です。
遺言書として成立させるために、正式な遺言書の形に合わせて作成しましょう。公証人が作成する「公正証書遺言」なら、特に安心です。
本人が書く「自筆証書遺言」にする場合は、法務省の「自筆証書遺言書保管制度」を利用するとよいでしょう。
「自筆証書遺言書保管制度」は、法務局で遺言書の形式に問題がないかを確認したうえで、画像データとともに適切に保管される制度です。
遺言書があれば、相続人である兄弟の同意が得られなくても、基本的には遺言書の通りの相続となります。

ただし、遺留分については注意しなければなりません。遺留分は相続人に保証された最低限の取り分で、遺言書があっても遺留分は守られます。
少なくとも、遺留分は他の相続人に支払えるよう、土地以外の資産を残してもらいましょう。
できれば遺留分だけでなく、相続の不公平感をなくすために、親が生命保険などを利用して他の相続人の取り分を残せると理想的です。

土地評価額が上がる可能性があれば生前贈与を検討

一般的に贈与税額よりも相続税額の方が低くなるため、特別な理由がない限り相続の際に土地を受け継ぐ方が、金銭的に負担が軽くなります。
ただし、親の土地の評価額が将来的に大幅に上がる可能性があれば、生前贈与の方が節税できるケースもあります。

また、土地評価額が2,500万円以下の場合、相続時精算課税制度を利用すれば贈与税が発生せずに生前贈与でき、相続時に精算可能です。ご自分のケースでは生前贈与をしたほうがメリットがあるかを検討しましょう。

専門家に相談する

親の土地に家を建てると、税金や権利など複雑な問題が絡んできます。
相続トラブル対策や節税対策は個人では判断できないケースが多くあるので、一度、専門家へ相談するとよいでしょう。
ご自分の状況に合わせて、的確なアドバイスが聞けるはずです。

親の土地に家を建てる時はトラブル対策が大事!専門家にも相談を

親の土地に家を建てるのには、さまざまなトラブルが発生するリスクを伴います。紹介したトラブル事例を参考に、自分にも同じようなトラブルが起きるかもしれないと想定しながら対策を立てましょう。

トラブルを回避するための対策では、税金や権利、相続など、さまざまなことに配慮しなければいけません。

一方で、対策を講じるにあたっては、個人では判断できないような難しいこともあります。専門家に相談しながら対策を進め、後悔のないようにしましょう

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