木のぬくもりを感じられる木造住宅は根強い人気ですが、耐震や耐火などの面でデメリットを感じるかもしれません。
しかし、日本で最も多く建てられている新築物件は木造住宅です。ここでは、木造住宅のメリットとデメリットを挙げ、実情を調査しました。
この記事の目次
木造住宅とは? 非木造住宅との違いはどこ?
柱や壁など構造体の大部分が木材で造られている住宅を木造住宅と呼びます。
現在も日本の住宅の多くは木造ですが、鉄骨造とは違う点はどこにあるのでしょうか。
木造住宅の構造や、工法についても交えながら紹介します。
木造住宅の構造
在来工法の木造建築は、基礎と骨組みをつなぐ土台の上に、建物を支える柱をはじめ、床や壁を支える梁(はり)や桁(けた)などからできていることが一般的です。
そして、屋根を支える母屋と垂木(たるき)、床材を支える根太(ねだ)、強度を高めるための筋交いによって、全体で建物を支えるという構造が基本です。
なお、一般住宅では、柱や梁、筋交いといった接合部や耐震補強が必要な構造部に金具が使われます。
木造住宅の工法
木造住宅の工法は、主に「在来工法」と「2×4(ツーバイフォー)工法」です。
以下に「在来工法」と「2×4(ツーバイフォー)工法」について簡単にまとめたので、違いを把握する際の参考にしてください。
在来工法 | 2×4(ツーバイフォー)工法 | |
発祥 | 日本 | アメリカなど |
構造 | ・点を結ぶような構造 ・物を造る軸組工法 | ・面を組み立てて構造物を造る枠組壁工法 |
間取りの自由度 | ◎ 高い | △ 低い |
リフォーム | ◎ しやすい | △ しにくい |
再現性 | ・施工会社や職人の技術によって品質が左右されやすい | ・システマティックでマニュアル化されているため品質のぶれが少ない |
耐震性 | △ 低い(ただし耐力壁や柱、梁の配置で耐震性UPも可能) | ◎ 高い(六面体で支える構造のため) |
耐火性 | △ 低い(防火性能の高い素材の選択により耐火性UPも可能) | ○ ・石膏ボードに含有される結晶水による水分蒸発により温度の上昇が遅い ・枠組材による火の通り道を塞ぐ構造および面が多く、炎が跳ね返されやすくなるため |
木造住宅の割合
総務省統計局の調査によると、日本国内における一戸建全体の9割以上を占めているのは木造住宅です。
参考:平成30年住宅・土地統計調査住宅数概数集計 結果の概要より
マンションなど非木造が増えたとはいえ、一戸建てについては木造の人気がまだまだ高いといえるでしょう。
木造住宅と鉄骨構造に違いはある?
主な構造体が木材で建てられたものが木造住宅、鉄骨で建てられたものが鉄骨造住宅です。
さらに、鉄骨造には「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」の2種類があります。
一般的に、戸建建築で「鉄骨造住宅」と呼ばれるのは、厚さ6ミリ以下の鋼板の鉄骨で建てられた「軽量鉄骨造」のことです。
「軽量鉄骨造」については、以下の記事で詳しく紹介しています。
軽量鉄骨造住宅のメリット・デメリットとは。他の構造との違いも交えて解説
本記事では、軽量鉄骨造住宅におけるメリットやデメリット、木造など他の構造との違い、さらには建築の際に知っておくべきポイントなどを紹介します。
メーカーごとに得意な構造や工法があるものの、鉄骨造、木造ともに建築基準法にのっとって建てられるため、耐震性や耐火性に大きな違いはありません。
一般的に、鉄骨造に比べて木造は火災保険料が高くなりますが、固定資産税は軽くなります。
戸建ての火災保険について知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
戸建ての火災保険の相場はいくら?必要な補償の見極め方を知って賢く選ぼう
この記事では火災保険の必要性と相場、決定基準、選び方、注意点を紹介します。必要な補償の見極め方を知って、自分に合った火災保険を賢く選びましょう。
木造住宅のメリットは?
日本では、従来から木造の建築物が多く建てられてきました。現在でも人気の高い木造住宅、その魅力はどこにあるのでしょう。
温もりのある空間が生まれる
木造住宅の魅力のひとつは、木の温かみを感じる上質な空間づくりができる点にあります。
質感や触感の心地よさと優れたインテリア性をもつ無垢素材は、幅広い世代に人気です。木材から発散するフィトンチッド(※)によるリラックス効果も注目されています。
※植物から出る殺菌作用がある揮発成分
基礎工事の価格が抑えられる
重量がある鉄骨造に比べて軽量の木造住宅は、地盤強化や基礎工事について、時間だけでなく価格も軽減されます。
断熱性・調湿性に優れている
木材には、熱を伝えにくく湿気を吸収する性質があります。
四季の寒暖の変化や、梅雨がある日本の気候に合っている建材といえるでしょう。
また、木の家は1年中過ごしやすく、住宅がカビにくいメリットがあります。
耐震性・耐火性に優れている
木材は自然な「しなり」が揺れを吸収する点で、地震に強いといえます。
特に2×4(ツーバイフォー)工法は、衝撃を六面体で家全体に分散させて変形や崩壊を防ぐ、耐震性の高い構造です。
また、火災時に木は燃えやすいイメージがありますが、すぐに全部燃えてしまうわけではありません。
表面に近い部分が燃えても炭化層となって先の酸素供給を阻むため、木材の中心部まで燃え進むには時間がかかるのです。
火災時に避難する時間が取れる点で、安全性が高いといえます。
設計の自由度が高い
在来工法の木造住宅は、2つの部屋の壁を取り払い、ひとつの部屋にするなど比較的自由に空間のアレンジが可能です。
増改築などリフォームがしやすいため、家族の成長に伴うライフスタイルの変化にも対応しやすいでしょう。
環境にやさしい
環境への配慮につながる点も、木造住宅の特徴です。
- 再利用できる木材を活用してカーボンニュートラルに貢献
- 健全な森林循環を保つことで土砂災害などの自然災害を抑制
- 木材の利用により、大気中のCO2を低減して地球温暖化を防止
日本は、2050年にCO2の排出量の収支をゼロにする、カーボンニュートラルを目指しています。住宅への木材の使用は、地球温暖化や気候変動、資源を守るといった社会課題の解決にもつながります。
木造戸建て住宅購入前に考えてしまいがちなデメリット
温かみがあり、癒し効果も期待できる木造住宅ですが、一方で、どんなデメリットがあるのでしょうか。
木造住宅を選択する際に、気になってしまいがちなデメリットについても見てみましょう。
材料費が高いのでは?
木造住宅に使われる木材には主に、丸太から切り出された状態の無垢材と、木材を貼り付けて成形した集成材の2種類があります。
無垢材にはヒノキやスギ、松、チークなど多くの種類があります。中には入手しづらいものや、高額なものも。
目に見えるところには無垢材を使い、壁の裏の構造材などには集成材を使うなどして、価格を抑えるのが一般的です。
耐震性や耐火性に劣るのでは?
日本は地震が多く、地震による倒壊や火災の被害も出ていることから、木造が地震や火災に弱い印象を持つ人も多いでしょう。
確かに、古い木造家屋には、倒壊や火災のリスクがあります。
しかし、新築家屋は、建築工法の進化に加え、震災後に厳しくなった現在の建築基準法に対応して建てられるため、安心です。
遮音性や防音性が低いのでは?
重量鉄骨住宅に比べ、振動や音が伝わりやすいことも、気になる点です。
防音性・遮音性については、防音効果のある建材を採用するとよいでしょう。
室内に、柱や梁による凹凸が多いのでは?
在来工法では構造上、柱や梁の多さが気になるかもしれません。
木造でも面で支える構造の2×4(ツーバイフォー)工法を採用すれば、柱や梁のでっぱり部分を少なくできます。
施工会社の腕によって差が生じやすいのでは?
木造住宅は施工会社の腕によって差が生じやすく、希望の施工ができないと判断されたり、素材の選択肢が限られてしまったりするのは事実です。
後悔しない家づくりのためにも、依頼の候補を複数の会社に広げることが大切です。
建物の寿命が短いのでは?
国土交通省の「長持ち住宅の手引き」という資料では、日本の住宅利用期間(取り壊される住宅の平均築後経過年数)は平均30年というデータがあります。
木造住宅の実際の寿命は、環境や使い方によって30年~80年前後ともいわれ、差が大きいものです。
また、国税庁の「耐用年数(建物/建物附属設備)」によると、木造住宅の法定耐用年数は22年とされています。
木造住宅の法定耐用年数は法で定められた「固定資産として使える期間」のことで、耐久年数ではありません。
以上を考慮して、木造だから鉄骨造よりも寿命が短いとは限らないという点を覚えておくと、家を建てるときに役立ちます。
高い階層の住宅には向かないのでは?
現在、木造で建てられている多層階住宅の多くは3階建てまでです。
都市部の狭小地には、縦の空間を活かした3階建てをはじめ、さらに高い4階建て以上の多層階住宅も増えてきました。
木造の3階建て以上の住宅を展開している施工会社もあります。
売却時の値段が低くなるのでは?
売却について検討している方は、国税庁の法定耐用年数を考慮するとよいでしょう。
建物の売却時、売値の基準となる法定耐用年数は、鉄骨造34年、木造22年とされています。
ただし、木造住宅は築22年を過ぎると内部が綺麗でも建物自体の売買上の価値はゼロになるため、注意が必要です。
白アリの被害に遭いやすいのでは?
湿った木材に発生しやすい害虫、白アリ。
白アリに木材を食べられてしまうと、家屋が傷み、耐久性が悪化します。
定期的に床下をチェックする、薬剤による防蟻施工を行うなど、白アリ対策を行いましょう。
防蟻処理の保証など、アフターサービスのしっかりしたハウスメーカーを利用すると安心です。
木造住宅のデメリットを解消するためにできること
木造のデメリットとされるほとんどは、建築技術の向上や法改正、材料の進化によって解決されています。
耐震性や防火性、シロアリ被害も事前に対策すれば問題ありません。
価格面は補助金の利用も考えよう!
材料費や建築費以外でも費用を抑える技があります。
地域型住宅グリーン化事業などの補助金を活用すれば費用面での負担が軽減するでしょう。国土交通省の採択を受けた住宅メーカーを探すのがコツです。
なお、補助金や助成金・給付金は年度によって終了することもあるため、こまめにチェックしましょう。
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新築戸建てを購入する際に活用したい給付金制度を紹介します。マイホーム購入を検討中の方はぜひチェックしてくださいね。
家づくりの心配に対して親身に対応してくれる施工業者を選定しよう!
材料の良し悪しを見極めることができ、現場での熟練の技術や品質管理を備えた施工業者を選ぶことも重要です。
「建築だけでなく、税制も給付金・補助制度・住宅に関する法改正も、頻繁に変わるから政府のサイトを見てもわからない……」という不安な気持ちを汲み取り、最適な提案をしてくれる施工業者を見つけましょう。
防音機能を強化
近年の木造住宅は隙間を少なくする施工技術の向上や専用部材により、木造住宅のデメリットだった気密性が高くなっているため、断熱性や防音性も上がっています。
それでも心配な方は、屋根や壁の中の断熱材を防音性の高いものにする、二重サッシを採用するなどでの対策可能です。
木造住宅についてどこで情報を収集する?
デメリットを解消して、理想の注文住宅を建ててもらえるハウスメーカーや工務店をさがすには、どうしたらよいでしょうか。
知人の住宅を見せてもらう方法や、地元の工務店、住宅展示場で相談する方法があります。詳しく見てみましょう。
知人の住宅
家を建てた親戚や知人がいるなら、自宅を見せてもらうことも手段のひとつです。
苦労した点や、後からこうすればよかったと思う点などのリアルな感想が聞けるでしょう。
家族構成も把握したうえで、実際に住んでいる方から得られる生の情報は、ありがたいですよね。
地元の工務店
敷地となる土地が決まっているなら、そのエリアの工務店を探すことも検討しましょう。地元ならではの情報に明るいのがメリットです。
ただし、商談を始めると他のメーカーや工務店と比較および並行して検討しにくいなどのデメリットもあるため、注意しましょう。
住宅展示場
木造住宅を検討しているなら、複数のハウスメーカーが1カ所に集まっている住宅展示場に出かけましょう。
鉄骨造住宅も一緒に見学できることから、木造住宅のデメリットとメリットを体験できるのが良いところ。
ポイントをメモにまとめ、目当てのメーカーに予約をして行くとよりスムーズです。
実際に展示されている、インテリアコーディネーターの空間作りも参考になりますよ。
また、補助金制度や法律の改正など最新情報が得られるのも大きいですね。
展示場を探す
実際の空間を多くのハウスメーカーで体験してみましょう。予算や家族構成、ライフスタイルなどを考慮しながら、理想の住まいについてお気軽に相談ができます。
木造住宅のデメリットは過去のもの? 最新の建築技術なら安心!
耐震性や耐火性をはじめとした木造住宅の性能は、鉄骨造と大きな差がないことがわかりました。
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専門的な知識を持ったスタッフに何でも聞きながら、家づくりを成功させてくださいね。