新築住宅の取得や住宅のリフォームに関する補助制度は、さまざまな種類があります。その中でも、特に若者夫婦世帯や子育て世帯に嬉しいのが「こどもみらい住宅支援事業」です。
本記事では、こどもみらい住宅支援事業に関する概要や対象要件、申請方法などを詳しく解説します。
この記事の目次
「こどもみらい住宅支援事業」とは?
「こどもみらい住宅支援事業」とは、省エネ性能の高い住宅を新築した子育て世帯や若者夫婦世帯、もしくは省エネのためのリフォームを行う全世帯を対象とし、補助金を支給する事業です。
省エネ性能の高さやリフォームする箇所によって補助金額が異なります。住宅の新築・購入・リフォームを検討している方はぜひとも知っておきたい制度です。
「こどもみらい住宅支援事業」の目的
「こども未来住宅支援事業」は、以下の2つの観点から計画された事業です。
- 子育て支援
- 2050年のカーボンニュートラルの実現
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの「排出量」から「吸収量」を差し引き、実質的にゼロになることを目的とする取り組みで、実現するためにはさまざまな分野での施策が必要です。住宅の省エネ対策をすることで住宅分野の脱炭素化につながります。
そこで、省エネに関する要件を設けた補助金の支給により、特に子育て世帯や若者夫婦の金銭的な負担を低減します。それにより、世帯住宅の取得・リフォームがしやすい環境を作り、省エネ性能の高い住宅のストックが可能になるというわけです。
「こどもみらい住宅支援事業」の注意点
「こどもみらい住宅支援事業」には2つの注意点があります。
1つめは、注文住宅の新築や新築分譲住宅の購入の場合、対象が子育て世帯もしくは若者夫婦世帯に限られている点です。リフォームの場合は全世帯が対象となりますが、住宅の取得に関しては対象範囲が定められている点に注意しましょう。
もう1つが、「こどもみらい住宅事業者」が申請手続きや補助金受け取りを代行する点です。対象者がすべての手続きを行うのではありません。「こどもみらい住宅事業者」に登録した住宅事業者でなければ手続きできないため、注意が必要です。
注文住宅の新築、新築分譲住宅の購入の場合
まずは、注文住宅の新築や新築分譲住宅の購入の場合、どのような条件であれば補助金が支給されるのか解説します。
補助金の対象者
補助金の対象となる世帯は、以下の要件に該当しなければなりません。
- 注文住宅の場合:こどもみらい住宅事業者と工事請負契約をして住宅建設を発注する子育て世帯もしくは若者夫婦世帯
- 新築分譲住宅の場合:こどもみらい住宅事業者と不動産売買契約をして新築分譲住宅を購入する子育て世帯もしくは若者夫婦世帯
なお、子育て世帯と若者夫婦世帯とは、以下の要件に当てはまる世帯を指します。
- 子育て世帯:申請時点において、2003年4月2日以降に出生した子どもをもつ世帯
- 若者夫婦世帯:申請時点において夫婦であり、夫婦どちらかが1981年4月2日以降に生まれた世帯
この要件に該当しない場合、補助を受けられません。
対象となる住宅
こどもみらい住宅支援事業の対象となる住宅として、以下の条件が定められています。
- 「ZEH住宅」「高い省エネ性能等を有する住宅」「一定の省エネ性能を有する住宅」のいずれかに該当すること
- 住戸の延べ面積が50平方メートル以上であること
- 対象者自らが居住する住宅であること
- 土砂災害防止法に基づく、土砂災害特別警戒区域外に立地すること
これらの要件を満たしていない住宅は補助対象とならないため、注意しましょう。
補助金額
補助金額は、対象住宅の省エネ性能の高さにより異なります。
- ZEH住宅:100万円
- 高い省エネ性能等を有する住宅:80万円
- 一定の省エネ性能を有する住宅:60万円
なお「高い省エネ性能等を有する住宅」の場合、2022年10月1日から変更された新基準で認定されると、補助金額が100万円になります。
対象期間
こどもみらい住宅支援事業は、対象期間が定められているので気を付けましょう。
契約期間 | 2021年11月26日~遅くとも2023年3月31日の間の契約締結 ※「一定の省エネ性能を有する住宅」の新築は、2022年6月30日までの契約締結 |
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着工 | 契約事業者がこどもみらい住宅事業者として登録以降 |
交付申請期間 | 2022年3月28日~遅くとも2023年3月31日 |
完了報告期間 | 戸建住宅:交付決定~2023年10月31日 共同住宅等で階数が10以下:交付決定~2024年7月15日 共同住宅等で階数が11以上:交付決定~2025年5月31日 |
ただし、着工後に必要書類を提出すると交付申請の予約ができます。また、一定以上の出来高の工事が完了すると申請が可能なので、すべての工事が完了していなくても申請できます。
なお、交付申請は「遅くとも2023年3月31日まで」とされていますが(2022年11月時点)、予算が上限に達した場合、早く締め切られる可能性もあります。制度を利用したい方は、国土交通省が運営する「こどもみらい住宅支援事業」のホームページの情報をこまめに確認しましょう。
リフォームの場合
次は、住宅のリフォームの場合の補助金対象を解説します。
補助金の対象者
こどもみらい住宅事業者と工事請負契約を締結し、リフォームを発注した住宅所有者等が対象となります。所有者等とは、法人を含む住宅所有者、居住者、管理組合、管理組合法人が該当します。
新築住宅の取得とは異なり、リフォームの場合は本人や家族などの生年月日は関係なく、全世帯が対象となります。ただし、子育て世帯や若者夫婦世帯は補助金額が大きくなります。
対象となるリフォーム内容
補助対象となるリフォームは、必須の工事と任意の工事があります。
必須の工事については、下記のいずれか1つ以上の工事が必要です。
- 開口部の断熱改修(ガラス交換、内窓設置、外窓交換、ドア交換)
- 外壁、屋根・天井又は床の断熱改修
- エコ住宅設備の設置(太陽熱利用システム、節水型トイレなど)
任意の工事については、必須の工事と合わせて行うことで補助対象となります。
- 子育て対応改修(ビルトイン食器洗機などの設置、防犯性の向上や生活騒音に対応するための開口部の改修など)
- 耐震改修
- バリアフリー改修(手すりの設置、ホームエレベーターの新設など)
- 空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置
- リフォーム瑕疵保険等への加入
なお、それぞれの工事内容によって補助金額が異なり、合計補助額が5万円以上にならなければ補助対象とならないため注意しましょう。
補助金額
補助金額は、世帯や条件によって上限金額が異なります。
子育て世帯・若者夫婦世帯 | 自ら居住する既存住宅の購入を伴うリフォーム:最大60万円 自ら居住する住宅のリフォーム:最大45万円 |
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その他の世帯 | 自ら居住する安心R住宅の購入を伴うリフォーム:最大45万円 上記以外のリフォーム:最大30万円 |
子育て世帯と若者夫婦世帯に関しては、中古住宅の購入に伴うリフォームであれば最大60万円が補助されます。
対象期間
新築住宅の取得と同様の対象期間が定められています。
契約期間 | 2021年11月26日~遅くとも2023年3月31日の間の契約締結 |
---|---|
着工 | 契約事業者がこどもみらい住宅事業者として登録以降 |
交付申請期間 | 2022年3月28日~遅くとも2023年3月31日 |
完了報告期間 | 戸建住宅:交付決定~2023年10月31日 共同住宅等で階数が10以下:交付決定~2024年7月15日 共同住宅等で階数が11以上:交付決定~2025年5月31日 |
申請できるのは工事完了後ですが、着工から工事完了までに必要書類を提出すると、交付申請の予約ができます。
「こどもみらい住宅支援事業」の手続きの流れ
「こどもみらい住宅支援事業」はどのように手続きをしたら良いのでしょうか。流れを解説します。
1.「こどもみらい住宅事業者」を探す
まずは、工事を依頼する事業者を探します。本事業に登録している「こどもみらい住宅事業者」でなければいけないため、事務局ホームページから検索するか、事業者に直接問い合わせましょう。
2.詳しい要件を確認する
次はこどもみらい住宅事業者に相談し、詳しい要件を確認します。
新築住宅の取得の場合、省エネ性能の高さによって補助金額が変わるため、自分が取得したい新築住宅が対象になっているか確認しましょう。
リフォームの場合は、リフォーム内容により補助金額が変わります。必須内容と任意内容があるため、希望しているリフォーム内容が該当するか、どのくらいの補助金額が支給されるのか確認が必要です。
3.契約を締結する
住宅事業者(補助事業者)と契約を締結します。本事業利用への同意を示すため「共同事業実施規約」の締結も必須です。
契約締結後、着工となります。
4.補助金の交付申請をする
新築住宅の場合は基礎工事などの完了後、リフォームの場合は全工事の完了後に、交付申請を行います。遅くとも2023年3月31日までに申請しましょう。
補助金の申請方法
補助金の申請はこどもみらい住宅事業者が行うため、対象者自らは手続きしません。
ただし、リフォームの場合は住民票、本人確認書類や不動産売買契約書などを用意する必要があります。
5.補助金が交付・還元される
申請後、補助金が交付されます。ただし住宅事業者に振り込まれるため、対象者に直接支給されるわけではありません。
補助金は、以下のいずれかの方法で還元されます。
- 最終的に支払う契約代金の一部に充当
- 現金の支払い ※契約代金を精算済みの場合に限る
契約代金の支払いのタイミングにより還元方法が異なります。
6.新築のみ完了報告をする
新築住宅のみ、対象者が住宅へ入居した報告が求められます。入居報告は住宅事業者が代行しますが、住民票や不動産登記などの提出が必要です。
「こどもみらい住宅支援事業」でよくある質問
本事業に関して、多く寄せられる質問と回答をまとめました。
【質問1】他の補助制度を併用できますか?
新築住宅の取得の場合、住宅の取得や住宅の本体工事の全体もしくは一部を対象とする国の制度は併用できません。
またリフォームの場合は、リフォーム工事を対象とする国の補助制度を併用できません。住宅ローン減税などの税制優遇は併用できます。
【質問2】新築の場合、若者夫婦でなくても申請できますか?
要件を満たす若者夫婦と新築住宅へ同居する方が契約するのであれば、補助金を申請できます。
新築やリフォームでは「こどもみらい住宅支援事業」を活用しよう
住宅の取得やリフォームに関する補助制度は多岐にわたりますが、こどもみらい住宅支援事業は子育て世帯や若者夫婦世帯には特に手厚い内容となっています。
住宅の取得やリフォームの金銭的負担を軽減するだけでなく、省エネ対策にもなるため環境保護に役立てられる点もメリットと言えるでしょう。
ぜひ本事業の内容を理解し、新築住宅の取得や住宅のリフォームの際には活用を検討してください。