ペアローンを利用すれば、1人で住宅ローンを組むよりも借入可能額が大きくなります。一方で、離婚リスクや夫婦どちらかが死亡したときのことを考えると、住宅ローンがなくならないなどのデメリットもあります。
ここでは、ペアローンのメリットとデメリット、収入合算との違いについて詳しく解説します。
ペアローンとは
ペアローンとは、共働きなどで収入のある夫婦それぞれが借入する仕組みの住宅ローンです。
「ペアローン」という名称ですが、夫婦だけでなく、親子で組むケースもあります。
ペアローンを組む際には、夫婦または親子それぞれの支払い能力を考慮したうえで借入するため、1人で住宅ローンを申し込むよりも、借入可能額が増える可能性が高いです。
なお、ここでは、夫婦でペアローンを組んだ際について解説していきます。
ペアローンと収入合算の違い
夫婦で組むペアローンと収入合算はどちらも住宅ローンの借入方法ですが、違いがあります。
夫婦でペアローンを組んだ際の収入合算の違いを、表にまとめました。
夫婦でペアローンを借入 | 夫が主債務者、妻が収入合算者 | |
契約数 | 2件 | 1件 |
契約者 | ・夫 ・妻 |
・夫 |
連帯保証人 | ・夫に対して、妻 ・妻に対して、夫 |
・妻 |
返済義務 | ・夫 ・妻 |
・夫 |
団信加入 | ||
住宅ローン控除 | ||
所有権 |
団信とは、住宅ローンの債務者が死亡するなど万が一のトラブルがあった際に住宅ローンの支払い義務が免除される保険で、正式名称は「団体信用生命保険」です。
それに対し、収入合算は夫婦の収入を合算して返済能力を評価し、1つの住宅ローンを借入ます。
収入合算の場合は、主債務者だけにしか団信や住宅ローン控除は適用されません。
特に、住宅ローン借入時は、夫婦の収入や今後の人生設計に合ったプランを計画することが大切です。
ペアローンを組むメリット
夫婦で組むペアローンは、夫もしくは妻が1人で住宅ローンを借入るよりも、借入可能額が大きくなることが最大のメリットです。
その他のメリットについても、詳しく解説していきます。
借入可能額が大きくなる
「夫婦どちらかの収入だけでは、希望の住宅を購入できそうにない」という場合は、ペアローンを検討するのもおすすめです。
ペアローンを夫婦で組むと、両方の所得を評価したうえで、それぞれの借入可能額を決定します。
夫もしくは妻が1人で住宅ローンを借入るよりも、借入可能額が大きくなる可能性が高いです。
住宅購入の際、以下の内容も検討しやすくなるでしょう。
- 単独での住宅ローンでは購入できない間取り、エリアの住宅購入
- 中古住宅購入および大規模なリノベーションを行う
夫婦それぞれで団信に加入できる
夫婦で組むペアローンは住宅ローンを2つ組むことになるため、それぞれ団信に加入可能です。
夫婦が互いに団信に加入できることから、どちらかが住宅ローン支払い中に死亡する、あるいは高度障害になってしまった場合には、基本的にローンの返済負担を軽くできます。もし、3大疾病や所定の身体障がい状態・要介護状態になるリスクにも備えたいと考えるならば、団信で用意されている特約を選ぶことも視野に入れるとよいでしょう。
夫婦それぞれに住宅ローン控除が適用される
ペアローンでは、住宅ローンを2人分組むという点から、2人分の住宅ローン控除が受けられます。
住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んだ際に利用できる制度であり、「住宅ローン減税」とも呼ばれます。
原則として以下の条件の場合、所得税から最大13年間にわたって、住宅ローン残債の0.7%が控除可能です。
- 規定の床面積を持つ住宅を取得し、2025年12月31日までに入居
- 夫婦の合計所得金額が2,000万円以下である年度であること
- 住宅ローンの返済期間が10年以上
また、住宅購入から一定期間は、単独で住宅ローンを借入るときよりも節税効果が見込めます。
また、住宅の売却の際には、「居住用財産の3,000万円特別控除」という制度も検討してみてください。
夫婦2人で受けられる可能性がありますので、住宅を住み替える予定がある際はチェックしてみることをおすすめします。
夫婦が別の金利プランの住宅ローンを組める
ペアローンは、夫と妻で別々の金利プランが選択可能です。
互いに異なる金利プランを選ぶことで、家計や今後のライフプランに合った住宅ローンを借りやすくなるというメリットがあります。
たとえば、以下のように住宅ローンを組めば、この後紹介する妻の妊娠や出産による離職リスクにも対処しやすくなるでしょう。
余裕があるときに妻側の住宅ローンを繰り上げ返済して金利変動リスクに対処できますし、妻が妊娠や出産などの理由で一時的に収入が減少したとしても対処しやすいです。
- 夫:安定性を重視して、固定金利で住宅ローンを借入る
- 妻:繰り上げ返済を想定して、金利が安い変動金利で住宅ローンを借り入れる
このように、ペアローンでは単純に借入可能額を大きくするだけではなく、柔軟なプランでローンを組めるのも魅力だといえます。
ペアローンを組むデメリット
ペアローンは、夫もしくは妻が1人で借入をするより、多額の借入を受けられる可能性があります。
一方で、夫婦どちらかが死亡した場合も住宅ローンが残ってしまうなどのデメリットがあることを覚えておかなければなりません。
ここでは、ペアローンを組むデメリット4つについて、対処法とともに解説していきます。
夫婦どちらかが死亡した場合も住宅ローンが残る
ペアローンでは、夫婦のどちらかが死亡したとしても、完全に住宅ローンの返済義務が免除されることはありません。
住宅ローンの借入をする際は、団信への加入が要件に含まれていることが多いですが、ペアローンの借入時にも、夫婦それぞれが団信に加入します。
ペアローンの加入時には、夫婦が2人とも健康でなければなりません。
団信は基本的に、加入者が死亡もしくは高度障害状態になったときに、住宅ローンの返済義務が免除されるという生命保険です。
仮に夫が住宅ローン返済中に死亡したとしても、夫側の住宅ローンの返済義務しか免除されず、妻側の住宅ローンは残ります。
ペアローンを組んでいる夫婦のどちらかが死亡したときには、世帯収入が減る上に住宅ローンの返済義務も完全にはなくならず、家計の収支バランスが崩れてしまう恐れがあるのです。
万が一の際に収支バランスが崩れないためにも、以下のように対策を立てておきましょう。
- 別途生命保険に加入しておく
- 余裕を持った借入条件を設定する
諸費用が増えてしまう
夫と妻でそれぞれ借入するペアローンは、住宅ローンにかかる諸費用も単独ローンと比較して倍になってしまいます。
住宅ローンを組む際にかかる諸費用の内訳は、下記の通りです。
- 借入手数料:金融機関に対して支払う手数料
- 保証料:保証会社を利用しない場合には不要
- 団体信用生命保険料:一律の金額はないが、約10~12万円かかることが多くある(※)
- 印紙税:住宅ローンの契約書作成時にかかる
- 登録免許税:抵当権設定登記時にかかる
(※)団信保険料は、借入金額に対して数パーセント、という計算方法になります。したがって「一律この金額」という提示方法ではありません。
住宅ローン借入時にかかる諸費用は、借入金額の3~10%程度といわれています。
ペアローンを借りる際には、単独での住宅ローンよりも諸費用が大きくなるデメリット以上に、金利などの借入条件や借入可能額にメリットがあるのかを確認しましょう。
家計全体の住宅ローン返済額が大きくなりやすい
ペアローンを組むと、夫婦どちらかが単独で住宅ローンを組むよりも、借入可能額が大きくなりますが、借入額が増えると住宅ローンの返済負担も増えます。
希望のエリアや間取りの物件も購入しやすくなる一方で、世帯収入から見た住宅ローンの返済負担が大きくなりやすい点に注意しましょう。
住宅ローンの返済負担率は「住宅ローンの年間返済額÷年収×100」で計算可能です。
たとえば、世帯年収が1,200万円であり、年間で300万円住宅ローンを返している場合の返済負担率は25%です。
金融機関が審査時の基準にする返済負担率は25~35%程度ですが、実際に生活をしていく中で、無理なく住宅ローンを返していける返済負担率は、手取りの20%程度といわれています。
住宅購入時には「ローンの審査が通るだろうか」ということを気にしてしまいがちですが、住宅ローンを無理なく完済するためにも、借入審査が降りた後のライフプランを立てておくことが非常に大切です。
特に、住宅ローンは返済期間が長期にわたります。
子どもの誕生や受験、入学など生活に変化があったときにも、滞りなく返済できる金額での借入がおすすめです。
退職リスクや離婚リスクがある
夫だけでなく妻も住宅ローンの債務者となるペアローンでは、妊娠や出産などで退職、一時的に収入が減少したときに対応できない恐れがあります。
さらに、ペアローンを組んだものの離婚した際は、住宅の名義や住宅ローンの残債をどうするかなどで揉めてしまい、以下のような事態に陥りやすいです。
- 夫婦両方が合意せず住宅を売却できない
- 夫婦のどちらかが返済を拒否し連帯保証人となっている夫もしくは妻が返済をしなければならなくなる
- 離婚をしても名義を変更できず住宅が共有名義のままになってしまう
ペアローンを組んでいる夫婦が離婚する際には、住宅の共有名義や、ローンの残債に関する問題を当事者のみで解消することは困難でしょう。
離婚や住宅ローン問題に詳しい弁護士などへの相談をおすすめします。
ペアローンを組むことが向いているケース
単独での住宅ローンよりもペアローンを組むほうが向いているケースを2つ紹介します。
覚えておきたい点として、住宅ローンは、夫婦それぞれの収入状況やローンを申し込む金融機関によっても取り扱いが異なることです。
自分のライフスタイルや収入状況、購入する物件に合った住宅ローンを組むために、金融機関や不動産会社の担当者への相談も併せて検討しましょう。
希望の住宅を夫婦どちらかだけでは購入できないケース
希望の住宅が決まっているものの、夫婦どちらかの単独借入では購入が難しいというときは、ペアローンの検討をおすすめします。
夫婦それぞれが所得を評価されたうえで住宅ローンを組めることから、単独で借入るよりも、借入可能額が大きくなる可能性が高くなるためです。
ただし、ペアローンの借入には前でもお伝えした通り、デメリットやリスクがあることを考慮しなければなりません。
借入可能額だけでなく、月々の返済額やライフプランも考えたうえで、無理のない条件でペアローンの借入を検討しましょう。
夫婦共に正社員で収入が同程度のケース
夫婦ともに正社員で、収入が同程度ある場合にも、ペアローンはおすすめです。
夫婦でペアローンを組むことによって借入可能額が大きくなるだけでなく、以下のメリットも期待できます。
- 夫婦2人で住宅ローン控除が適用される
- 条件を満たせば夫婦それぞれが団信に加入できる
- 夫婦で異なる金利プランを選択できる
夫婦で組むペアローンのメリットを活用すれば、家族構成や夫婦の働き方、家計に合った住宅ローンを借りられます。
ペアローンを組む際にはデメリットも考慮しよう
ペアローンには、借入可能額を大きくするメリットがある一方で、世帯年収から見た返済負担率が高くなりやすいというデメリットもあります。
住宅購入時は、希望の住宅を手に入れることやローン審査を通すことに意識が向きがちです。
しかし、ローンを借りた後は、返済が数十年にわたり続くことを忘れてはいけません。
後になって「ペアローンを借りたけど返済できなくなってしまった」とならないように、借入る際はデメリットも理解したうえで、無理のない返済計画を立てましょう。
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